海外旅行回想録(6) ー ギリシャ

はじめに

この記事のシリーズでは三十数年前に行った海外旅行を中心に特に思い出に残っている観光の回想録をご紹介しています。

この記事ではギリシャ旅行の体験をご紹介したいと思います。

6.ギリシャ

1986年~1991年は日本では景気が湧きに沸いたいわゆるバブル景気の時代でした。人々の収入が増えるに従って余暇の過ごし方も豪華になって海外旅行に行く人も次第に増えてきました。

海外旅行先としては、最初は昔からのあこがれのハワイが人気でしたが次はフランス、イタリア、スイスを中心とするヨーロッパの人気がでてきました。

ヨーロッパの一部としてギリシャも素敵な観光地として認知され始めました。特に「ギリシャに行ってエーゲ海クルーズを楽しもう」などといった宣伝文句が旅行会社のパンフレットに踊るようになっていました。

ギリシャはギリシャ神話や古代ギリシャ文明など偉大な歴史遺産を有し、また真っ青な海と空が楽しめるエーゲ海の美しい島々など観光資源が豊富です。ハワイと並んで新婚旅行先としても人気があります。

私たちがギリシャを観光で訪れたのはまさに日本でバブルが始まった最初の年1986年でした。この旅行では10名ほどの団体ツアーに参加しました。

アテネ市街

ギリシャの首都アテネは首都だけあって街角は観光客でとても賑わっていました。

市内観光はシンタグマ広場からはじまりました。国会議事堂前では左の写真のような近衛兵が歩哨に立っていました。

まるで若い女性のような明るくて可愛い服装がとても特徴的でした。短いスカートのような着物、帽子の右側から垂れ下がった黒っぽい飾り、膝のバンド、靴の先にあるぼんぼんなどすごみというより愛着が湧くようないでたちです。

警護で立っているにしてはあまり威圧感がありません。観光をかなり意識しているのではないかと思われるほどです。

デンマーク、イギリス、台湾など近衛兵を観光で見る機会がある国はたくさんありますが、総じていえることは、背丈が非常に高い(多分2mは超えていると思います)、交替の時以外は直立でピクリとも動かない、そしてまばたきさえもしないなどです。

海外で近くで近衛兵を見るのはこの時が初めてでしたので、近づいても大丈夫なのかと心配になりましたが、ガイドさんが「触らなければ並んで記念撮影しても大丈夫ですよ」と言ってくれたので喜んで2ショットで記念撮影させてもらいました。近衛兵はもちろん笑顔を作ってくれるわけではなくそのまま遠くを見つめて立ちすくしたままです。

どこの国の近衛兵も1~2時間に一度は必ず交代のパフォーマンスを行います。できればこの交代時間に合わせて観光に来るのがお勧めです。

アクロポリスの丘

アクロポリスの丘はパルテノン神殿をはじめ数々の遺産が保存されていて世界遺産に登録されています。ここはギリシャ観光の目玉になっています。

   

丘の麓から望むパルテノン神殿(左)とエレクティオン神殿(右)

丘に登り最初にパルテノン神殿を訪れました。

私たちが訪れた時は周辺に石材がたくさん転がっていてまだ修復中という状況でした。近くに寄って見ると思ったより建物は大きくて立派でした。

パルテノン神殿はあまりにも有名で幼いころ学校の教科書で何度もこの写真を見ましたので実物を見た時には何か懐かしい感じがしました。

古代ギリシャ文明の象徴であるこの神殿はギリシャ神話に登場する知恵・戦略・戦争の女神アテーナーに捧げられたものだそうです。

古代ギリシャの建築様式の1つであるドリス式の柱が46本あります。柱の中央に膨らみを持たせて人が下から見上げた時に真っ直ぐに見えるという工夫がされたエンタシス技法が使われているそうです。

パルテノン神殿のエンタシス柱は紀元前400年代頃に作られましたが、実はその約1,000年後に作られた日本の法隆寺の西院伽藍の回廊と金堂の柱もエンタシス柱と似ているそうです。

パルテノン神殿は石材で法隆寺は木造ですが歴史的な何かのつながりがあるのでしょうか、あるいは偶然に同じような効果を狙った技法になったのでしょうか。

パルテノン神殿の向かい側にはエレクティオン神殿があります。

この神殿には、女神アテーナーと海神ポセイドンがアテナイの守護神の座を求めて争ったときに、ポセイドンがトライデント(三叉槍)で突いて噴き出したという塩水の井戸や、アテーナーが槍で突いた場所から生えたというオリーブの木があります。オリーブの木の有効性が評価されて結局アテーナーが選ばれたということだそうです。

エレクティオン神殿で最も注目が集まるのが、神殿の南西部にたたずむ6体の女性像(カリアテッド)だと思います(上の写真)。繊細で非常に優美な姿がその芸術性の高さを示しています。

上の写真はディオニソス劇場です。アクロポリスの丘の南側に丘の斜面を利用してつくられています。お酒と演劇の神であるディオニソスの聖域に造られたギリシア最古の劇場だそうです。

上の写真はイドロ・アティコス音楽堂です。その昔アテネの政治家だったイロド・アティコスが、父親の遺産を利用して建設しアテネ市に寄贈したものだそうです。

観客席は約6,000人が収容できる大規模なものです。現在でもコンサートやオペラなどのさまざまな催し物に利用されているとのことです。

アクロポリスの丘の観光を終えて麓まで下りてきた辺りには地元でとれた果物を乾燥させたドライフルーツを売るお店がたくさん出ていました。ナツメやブドウなどおいしそうな色々な種類のドライフルーツがありました。

ツアーグループの何人かは興味を示して色々と選んでいましたが、実は8か月ほど前にウクライナ(旧ソビエト)のチェルノブイリ原子力発電所で重大な原子力事故が起きていました。死者数は数十名と発表されたようですが、長期的には数千名とも言われています。

このギリシャ旅行に出発する前に何度かニュースなどで放射性物質を含んだ細かいチリがヨーロッパ方面へ流れてきているのではないかというようなことが言われていました。

皆でそのような話題におよび、ヨーロッパで収穫した果物にも気を付けたほうが良いだろうということになり、結局その時はドライフルーツを買うのは見合わせることにしました。

次の写真はアクロポリスの丘から眺めたリカヴィトスの丘です。

リカヴィトスの丘は、神話で女神アテーナーがアクロポリスを建設中に誤って落した巨岩と言われています。

ここはアテナ市内で最も高い丘で高さ約300mあります。ケーブルカーで頂上まで登ることができて頂上には教会、レストラン、カフェなどが揃っています。頂上からは360度アテネ市全域の絶景を楽しむことができます。

アクロポリスの丘を観光した後、ホテルでの夕食まで自由行動になったのでタクシーでリカヴィトスの丘へ行くことにしました。

すると同じツアーグループに参加していた新婚のご夫婦が是非同行したいということで一緒に行くことにしました。このご夫婦は英語が苦手でタクシーで道に迷うと困るので私たちに声をかけたということです。

エーゲ海クルーズ

ギリシャ観光のもう一つの楽しみがエーゲ海クルーズです。ギリシャ近辺にはミコノス島をはじめたくさんの美しい島々があります。

私たちのエーゲ海クルーズではイドラ島に立ち寄り2~3時間の自由行動がありました。

イドラ島は18~19世紀にかけて海上貿易で大いに栄えた海運の島で当時の豪商が建てた大邸宅もたくさんあるそうです。山の斜面に沿って赤い屋根と白壁の可愛い家が連なり美しい景観を形作っています。

アテネから船で日帰りで気軽に行けるイドラ島は芸術家の卵が集まる「アーティストの島」といわれたりまた猫が多いので「ギリシャの猫島」ともいわれているようです。

イドラ島の港で観光船を降りたらすぐにお土産屋さんやカフェなどが並んでいます(上の写真)。写真の中央下付近に移っているように早速2匹の猫がお出迎えです。また画面のちょうど中央には島のシンボル的な時計台が見えています。

港付近のお店を何軒か覗いて見た後は港が見下ろせる丘の上まで散策することにしました。

丘の途中から港を眺めた風景です。まるで箱庭のようにコンパクトで素敵な光景です。

   

また違った方向の別の風景です。

   

左上の写真のように地中海性気候で温かくて雨が少ないせいか大きな見事なサボテンが育っていました。

丘の上までの散策は30分程度でしたがとても気持ちが良いウォーキングでした。

丘の頂上付近には右上の写真のように風車が一基ありました。当時はかなり錆が出たりして手入れが行き届いていませんでしたが現在ではペンキも塗り替えられて素敵な風車に生まれ変わっているようです。ツアーの皆さんも風車を背景にしきりに記念写真を撮っていました。

丘の上でしばらく周囲の眺望を楽しんだ後港まで戻ろうとしていたら1匹の猫が近くに寄ってきました。猫が特に好きでもなかったので触るようなことはしませんでしたが、なぜかその猫は付かず離れずの距離を保ったままついてきました。目が合ってしまったからでしょうか。

丘を下る途中で何度か少し小走りで猫を引き離そうとしましたがそれでもだめでした。途中であきらめることもなく結局丘の上から港までずーと後をついてきました。

港に着くと雑踏に紛れてようやく猫はどこかへ行きました。

猫というとこのギリシャツアーではホテルでもちょっとしたハプニングがありました。

ギリシャのアテネのホテルにチェックインした時同じツアーグループの人が部屋に入った途端に猫と遭遇したということで驚いてホテルの廊下で軽い騒ぎになっていました。

その人はあいにく猫が苦手なようで騒いでいましたが、すぐにホテルの係りの人が来て結局その人はホテルの部屋を変えてもらっていました。

このようにギリシャ旅行では猫に何度も遭遇したので興味が湧き、ギリシャの猫について何かあると思い少し調べてみました。

ギリシャの猫

ギリシャの猫はイジアン(またはエーゲキャット)と呼ばれ、大昔からギリシャの島々で代々生まれ育った世界でも珍しい品種だそうです。見かけは日本の猫によく似ていますが、より筋肉質で頑丈な体をもち運動能力も高いそうです。

寿命は9~12年で平均的な猫よりは少し短いですが自然繁殖で独自の進化を遂げた遺伝子を持っているので猫遺伝性疾患がなく、病気に強い猫として注目を集めているようです。

イジアンはとても賢く人懐っこい性格で社会・環境への適応性も高いということです。また他の猫と違って水を全く恐れず、泳いだりもするようです。これは昔から港で漁師さんなどから魚をもらって生きてきて水には慣れているせいでしょうか。

ギリシャではたくさんのイジアン猫を見かけます。ネズミやその他の害獣駆除などを行ってくれる賢くて社交性あるパートナーとしてギリシャの人々の日常生活に昔からうまく溶け込んでいるからだと思われます。

今回の旅行で見かけたギリシャの猫も、エーゲ海のとても温暖な地域で魚などの豊富な食べ物、明るい親切な人々に囲まれて自由でおおらかに生きているように見えました。

終わりに

今回のギリシャ旅行では古代ギリシャの荘厳な数々の遺跡、コバルトーブルーの海と空が美しいエーゲ海、オリーブオイルとオリーブの実をたっぷりと使ったギリシャ料理(地中海料理)を楽しんできました。地中海料理は日本料理、中国料理と共に大好きな料理です。

またギリシャの人々も大変おおらかでみなそれぞれに自由に人生を楽しんでいるように見受けられました。

遺跡観光ですが、古代ギリシャの歴史や文化・芸術などある程度下調べをしてから訪れることがお勧めです。古代ギリシャ遺跡の場合には、自然の絶景を楽しむ観光とは違って背景や物語があまりにも膨大・豊富にあるからです。

今回のエーゲ海観光では、残念ながら全般的に薄曇りのお天気でしたのでコバルトブルーの海は期待していたほどは美しい姿を見せてはくれませんでした。

海がきれいだという場所は世界には、たとえばクロアチア・ドブロヴニクのアドリア海、パラオ諸島の周辺の海、ハワイ・オアフ島のラニカイビーチ、日本の八重山諸島の周りの海、アメリカ・フロリダのキーウエストの海などたくさんあります。

お天気(そらの青さと太陽の光の強さ)と時間帯、見る方向(太陽の方向)、さらに海の深さなどによってかなり海の美しさが違ってくることが最近良く分かってきました。うまく条件が合うとまさに息を飲むような見事な輝きのコバルトブルーやエメラルドグリーンの絶景を楽しむことができます。

団体ツアーの場合にはこれらの条件は選べませんのでもちろんその時の運になってしまいます。

ギリシャにはここでご紹介したように約35年前に一度行っただけです。その後遺跡などの修復もかなり進んでいると思いますのでいつか再度観光で訪れてみたいと思っています。

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