海外旅行回想録(8) ー フィンランド

はじめに

この記事のシリーズでは三十数年前に行った海外旅行を中心に特に思い出に残っている観光の回想録をご紹介しています。

この記事ではフィンランド旅行の体験をご紹介したいと思います。

8.フィンランド

30年ほど前の夏休みに北欧三国を団体観光ツアーで回りました。ヨーロッパのイタリア、フランス、スイス、ドイツなど主だった観光国を一通り回った人たちが北欧に関心を示し始めた頃でした。

まず最初に訪れたのはフィンランドでした。

フィンランドは昔から「森と湖の国」と呼ばれていて豊富な自然に恵まれています。またサンタクロースの居住地、ムーミンの故郷、そしてサウナで世界的に有名な国です。

国土の70%以上が森に囲まれているフィンランドでは、誰でも自然を楽しむことができる権利「自然享受権」が認められていて、森の中を自由に散策したり、ベリーやきのこなども採ることがができます。

またフィンランドには18万8000個もの湖があり世界で最も水が多い国の1つで水の綺麗さは世界のトップレベルだそうです。

さらにフィンランドは300万カ所以上のサウナがあるサウナ王国で実に国民2人に1つ以上という数にのぼるそうです。

フィンランドでは首都でかつ最大都市であるヘルシンキを主に観光しました。まず最初に立ち寄った最も有名な観光名所は次の写真のヘルシンキ大聖堂です。

ヘルシンキ大聖堂

白壁に緑のドームが美しい荘厳な大聖堂はフィンランド・ルーテル教会の本山として1852年に建設されたそうです。隣接した元老院広場(写真手前)は、御影石が敷き詰められたフィンランド最大の市民広場で、中央にはロシア皇帝アレクサンダー2世の像が立っています。

この市民広場と腰かけるのに都合が良い階段は文字通り人々の憩いの場になっているそうです。

この市民広場の周辺にはヘルシンキ大学、図書館、市庁舎など歴史的な建築物がたくさん建てられています。

次に訪れたのは造りが特徴的なテンペリアウキオ教会です。

テンペリアウキオ教会

氷河時代の岩盤をくりぬいてドーム型の屋根を被せてつくられた建物はとてもモダンでユニークです。内部の壁は掘られたままのゴツゴツした感じで重厚な雰囲気を醸し出しています。銅板が張られた天井と岩壁の間に自然光を取り入れるためのガラスがはめ込まれています。

原始の雰囲気とモダンな感じが融合したとても不思議な空間を形作っています。しばし椅子に腰かけてほかの教会にはない独特の雰囲気を楽しみました。

このような岩の中の教会ではパイプオルガンの音がどのように響くのか聞いてみたかったのですが当時は残念ながらその機会はありませんでした。

次はシベリウス公園へ向かいました。

シベリウス公園

   

シベリウス公園はヘルシンキの北西で海沿いにあります。元々この公園は1940年に作られていましたが1945年にフィンランドの国民的音楽家ジャン・シベリウス80歳の誕生日を記念してシベリウス公園と改名されました。

公園の北側にはステンレスパイプで作られた記念碑(写真左上)とシベリウスの肖像(写真右上)があり、訪れた人の人気の記念撮影スポットになっているようです。

ステンレスパイプの記念碑は彫刻家エイラ・ヒルトゥネンによって1967年に600本以上のパイプを組み合わせて作成され、高さ8.5m、幅10.5m、奥行6.5mで総重量は24tだそうです。

シベリウス公園は緑が美しい木々や綺麗な花々が綺麗に整備され、池や噴水もあり、ゆっくりと散策するだけで気持ちが良い場所になっています。

ところでシベリウスの最も代表的な曲は交響詩「フィンランディア」で国歌に次ぐ第2の愛国歌として広く親しまれているそうです。日本でもクラシック音楽愛好家には広く知れ渡っています。

今回の観光旅行中、観光バスで郊外を時間をかけて走っているときに、添乗員さんがシベリウスの代表曲を数曲バスの中で聞かせてくれました。曲の叙情的な素敵な旋律が耳にとても心地よく響き、車窓を流れる森や山や湖の素晴らしい風景と相まってとても感動したことを今でもはっきりと覚えています。

このように海外旅行ではその国の土地柄にあった音楽を観光バスの中で聞かせてもらえると旅が一層楽しいものになります。その時の光景が美しい音楽と共にいつまでも記憶として残ります。添乗員さんやガイドさんには是非お願いしたい付加サービスです。

フィンランドの風景

観光中に撮影したフィンランドらしい風景の写真をいくつか掲げておきます。

   

まさに森と湖の風景です。どこにいっても確かに森と湖をセットでたくさん見かけました。

   

街並みも緑が豊富です。建物は白色が多く自然の色を邪魔しないようにという工夫なのでしょうか。

遊覧船から撮影した湖のほとりに佇む住居です。桟橋には小型ボートも見えています。フィンランド人の自然に溶け込んだゆとりある優雅な生活が想像されます。

今回の観光ではヘルシンキオリンピックのメイン会場や絹の博物館なども訪れました。

   

左上の写真は1952年開催のオリンピックのメインスタジアムです。当時観光地は静かで私たち以外の観光客はあまり見かけませんでした。右上の写真は可愛くておしゃれな建物の絹の博物館です。この絹の博物館はネットで探しても見つかりませんので現在はすでに廃止されているのかもしれません。

フィンランド観光の最後には世界でも珍しい戦車博物館を訪れました。

戦車博物館

   

戦車博物館では上の写真のように森の中にたくさんの戦車が並べられて展示されていました。これだけたくさんの本物の戦車の野外コレクションを見るのは初めてでまさに壮観そのものでした。

展示内容が戦車ということで観光客も特に男性が目立っていました。多くの戦車にドイツのマークがついていたので北欧の国のフィンランドでドイツとどのような関係があったのか興味を覚えました。あまりにもたくさんのドイツ軍戦車が残っていたからです。

1939年に第二次世界大戦が勃発してまもなくソビエト連邦がフィンランド国内に侵攻を開始しました。フィンランド軍はマンネルヘイム将軍の指揮のもと熾烈な戦闘を続けてソ連軍を阻止、また国際世論によるソ連批判も高まったことから1940年にはソ連と平和条約が締結され講和しました(「冬戦争」)。

しかし当時フィンランドは講和の条件としてヴィープリ県やカレリア地方などをソ連に割譲せざるを得ませんでした。

その時以降フィンランドはソ連の圧力をかわし、さらに領土を取り返したいと思っていたようですが、1941年6月にドイツがソ連に侵攻を始めるとドイツ側についてソ連と戦争を再開しました。

しかしドイツ軍がスターリングラードで敗れて以降ソ連軍の反撃、再侵攻が始まりました。フィンランドはなんとか独立を守りたいと、1944年にドイツと袂を分かつこと、再度の領土の割譲と賠償金を条件にソ連との和平を成立させました(「継続戦争」)。

この継続戦争の期間にはドイツから大量のドイツ製武器がフィンランドに供与されたようです。これらの中にはドイツ製戦車も多く含まれていたものと考えられます。

1944年にドイツと手を切るときにフィンランド国内からドイツ軍が短期間で撤収していったと思いますが、その時の混乱などでドイツ軍戦車もフィンランド国内にたくさん残されてしまったと考えられます。

事実かどうかは分かりませんが、これが現在フィンランドが多くのドイツ軍戦車を保有している理由だと想像できます。

この戦車博物館の豊富な見事なコレクションは世界的にみてもかなり珍しいもののようで、日本のマニアの中にはこれらの戦車を見るためだけにわざわざフィンランドを訪れる人もいるほどだと言われています。

現在はこの戦車博物館は、戦車が風雨にさらされるなど痛みが早いために森の中の野外展示をすべてとりやめて屋内展示に切り替えているようです。しかし以前のような森の中での野外展示のほうがよりリアリティがあり迫力が増す効果があったのではないかと思われます。

フィンランドのヘルシンキからスウェーデンのストックホルムまで

フィンランド観光をすべて終えた後、ヘルシンキの港からシリヤラインの船に乗って次の訪問先であるストックホルムへ行きました。夕方5時頃に出港し翌日の朝9時半頃に到着する1泊の船旅でした。

このシリヤラインというバルト海クルーズの定番航路は数あるバルト海クルーズの中で最も人気のある黄金ルートでした。

なお、シリアラインは当時はフィンランドに本拠を置く船会社でしたが、2006年にエストニアのフェリー会社であるタリンクに買収されて現在はタリンク&シリヤラインと呼ばれています。また今は船自体も当時とはかなり違うレジャー設備満載の船に進化しているようです。

1泊の短いクルーズですが船はかなり大型でほとんど揺れを感じることなく快適に船旅を楽しむことができました。

   

左上の写真はヘルシンキの港を出港する私たちの船のデッキから港に停泊する同型船を撮影したものです。また右上の写真はヘルシンキ湾を出るときに見た小島の風景です。

当時その船にはフィンランドでは欠かせないサウナの大型施設がありました。サウナは初めての経験でしたが早速使わせてもらい良い思い出となりました。

事前に日本で読んだフィンランド観光旅行のガイドブックによると「シリヤラインの船のサウナでは原則皆さん裸で入ります。水着を着用しても良いですが他の人と比べて違和感があるので水着はお勧めしません。」と説明がありました。

それに素直に倣って私も裸で入ったところ何とほとんどの人が水着を着用していました。逆に裸のほうが違和感を感じることになってしまい少し慌ててしまいました。

当時はガイドブックしか頼るものがなく仕方がなかったのですが、現在ではネットで豊富な生の口コミ情報が簡単に得られますので上のような失敗は皆無になりました。

シリヤラインの船では上のようなちょっとした失敗はありましたが初めてのサウナを十分に堪能することができました。ときどき誰ともなくストーブに水をかけると真っ白な蒸気が勢いよく出ていました。またある人はヴァスタ(vasta)またはヴィフタ(vihta)と呼ばれる葉が付いた新鮮な樺の小枝の束を使ってやさしく体をたたいていました。

最後に

フィンランドは社会福祉がとても行き届き、安全で子供の教育システムも世界トップレベルなど、とても生活しやすく、国民の満足度も非常に高いと言われています。

今回の観光旅行では「森と湖の国」という自然に恵まれた素敵なイメージをまさに直接体感することができました。

フィンランドには洗練されたデザイン、美味しいグルメ、オーロラなどその他多くの魅力があると思われますが、もろもろの生活の快適さを実感するには1か月程度以上のロングステイをしてみると良いのではないかと思っています。

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