海外旅行回想録(12) ー オーストリア

はじめに

この記事のシリーズでは三十数年前に行った海外旅行を中心に特に思い出に残っている観光の回想録をご紹介しています。

この記事ではオーストリア旅行の体験をご紹介したいと思います。

12.オーストリア

約三十年ほど前に夏休みを利用してヨーロッパの数か国を巡る団体ツアーに参加しました。その時に初めてオーストリアを訪れました。また昨年の夏に再訪の機会にも恵まれました。

オーストリアはウィーン少年合唱団やウィーン・フィルハーモニー管弦楽団など音楽・芸術の国として特に有名です。

また昔日本でも大ヒットしたアメリカ映画『サウンド・オブ・ミュージック』の舞台となった都市ザルツブルクがあります。美しい音楽とアルプスの雄大な大自然の背景がとても印象深いすばらしい映画です。当時文部省(現・文部科学省)推薦の映画ということで非常に多くの子供たちがこぞって見に行ったことを覚えています。

ところで2回目にオーストリアを訪れた時にガイドさんから面白い話を聞きました。オーストリアとオーストラリアの綴りと発音がそっくりなので多くの日本人が取り違えるそうです。

ガイドさんによると日本のオーストリア大使館には入り口に「ここはオーストラリア大使館ではありません。オーストラリア大使館へ行くには・・・」などと注意書きがあるそうです。注意書きを出さざるを得ないほど間違って訪れる日本人が多いということでしょうか。

私自身も以前ヨーロッパ旅行中にオーストリアから観光で来ていた人とちょっと会話した時にオーストラリアから来た人だと完全に聞き違えてオーストラリア旅行に行った時の話題を出してしまいました。

相手が少し戸惑ったような顔をしていたのですが、私が間違いに気が付いたのはかなり時間がたってからでした。その時は思わず赤面してしまいました。

さて私たちの団体ツアーでは、オーストリアの首都であるウィーン、『サウンド・オブ・ミュージック』の舞台であるザルツブルク、2度の冬季オリンピックが開かれたインスブルックなどの都市を観光しました。

ウィーン観光

シェーンブルン宮殿

ウィーン観光ではまずシェーンブルン宮殿を訪れました。

シェーンブルン宮殿はマリア・テレジアで有名なウィーン・ハプスブルク家がフランスのベルサイユ宮殿に対抗して贅を尽くして建設した夏の離宮で、オーストリアの中で最も重要な文化遺産の一つとなっています。1996年にシェーンブルン宮殿とその庭園群、更に敷地内の世界最古の動物園までを含めた施設一帯がユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。

テレジアン・イエローに彩られた黄色の外観が印象的な宮殿と広大な敷地内にある美しい庭園や動物園など、世界中から多くの観光客を引き付けているそうです。

マリー・アントワネットの部屋や、6歳のモーツァルトが御前演奏をした鏡の間、ナポレオンが暮らした部屋など数々の豪華な部屋は全1441室もあるそうです。その一部が一般公開されています。

下の写真は宮殿のテラスから広大な庭を眺望した風景です。

庭の花壇のお花もきれいに整えられていてお庭をそぞろ歩きするだけで十分に楽しめます。当日は夏季だったこともあって上の写真のように予想以上のたくさんの観光客で賑わっていました。

王宮庭園(ブルクガルテン)

1818~1819年に建設された王宮庭園は元々皇室専用のお庭だったそうですが、現在はブルク公園として一般に開放されていてあの有名なモーツアルト像があります。

    

緑の芝生の上にお花で綺麗に作られたト音記号の先にモーツァルト像があります(左上)。この場所は記念撮影ポイントとして観光客の人気の場所になっているそうです。

皆さんお馴染みのモーツァルトはウィーン古典派を代表するオーストリアの作曲家で若いころは神童と呼ばれた天才だったそうです。

右上の写真はゲーテ像です。ゲーテは良く知られているようにドイツの文豪です。なぜオーストリアのウィーンのこのような特別な場所にゲーテ像があるのかちょっと不思議です。

実はオーストリアの有名な作曲家シューベルトはゲーテと同時代に生きていて、ゲーテの作品に多くの曲を付けており、シューベルトが生涯で作曲した600曲の歌曲のうち70曲ほどもゲーテの詩に作曲されたものだそうです。特によく知られたものは「魔王」や「野薔薇」などがあります。

このようにオーストリアの作曲家などに大きな影響、インスピレーションを与えた文豪ということでそれを記念してこのゲーテ像が建てられたのだと想像できます。

ところで「音楽の都」を代表する「ウィーン少年合唱団」は私たちが子供のころからその名声は聞き及んでいました。合唱団へ入るにはとても厳しい選考があり、入団できれば大変な名誉だと言われているとのことです。

観光で2回目にウィーンを訪れた際、ガイドさんが気を利かせてくれて、観光バスでウィーン郊外の美しい景色に囲まれた道路を移動するときに「ウィーン少年合唱団」の歌を何曲か流してくれました。

合唱団の透き通った声が周りののどかな緑の風景ととてもマッチしていて非常に快適なバス旅になりました。そのときの情景、心情と音楽とが一体化して快い記憶としていつまでも心に残ります。ガイドさんによるこのようなちょっとした付加サービスはとてもうれしいものです。

シュテファン寺院

次にウィーン旧市街の中心部でとても賑やかな場所に建つシュテファン寺院を観光しました。周りは建物が立て込んでいるのでこの寺院の全体をきれいにカメラに収める場所は見つかりませんでした。

    

シュテファン寺院はゴシック様式の教会で、正式にはシュテファン大聖堂と言うそうです。シュテファン寺院には北塔と南塔があり展望台からはウィーンの街を一望することができます。137mの尖塔(南塔)と珍しいモザイクの屋根が目立っています。

上の写真はその展望台から見た風景です。左側にシュテファン寺院の建物の一部、右側には美しい街並みが広がっています。

また左側の写真は寺院内部の様子です。内部は昼間でもほの暗く厳粛な空気が漂っていて、多くの柱と彫刻、美しいステンドグラスが見所になっています。

美術史美術館(美術史博物館)

19 世紀に開館した荘厳な美術史美術館は世界でも屈指の規模と内容を誇る美術館として知られています。豪華な内装が施された館内にはハプスブルク家が収集した古代から19世紀に至るヨーロッパ各地の美術品が収蔵・展示されています。

人によってはこの美術史美術館をフランスのルーブル美術館、スペインのプラド美術館とともに世界三大美術館(博物館)ということもあるようです。

以前このブログの「海外旅行回想録(5) ー スペイン」の記述の中では、①ルーブル美術館(フランス・パリ)、②プラド美術館(スペイン・マドリード)、③メトロポリタン美術館(アメリカ・ニューヨーク)、④エルミタージュ美術館(ロシア・サンクトペテルブルク)の4カ所が世界三大美術館(博物館)の候補だと挙げました。

要するに「世界〇大〇」というのは評価する人によって少し変化してくるということでしょうか。

上の写真は館内に入ったすぐの場所にある大階段ホールを撮影したものです。大理石を惜しげもなく使った豪華な内装はまさにハプスブルグ家が誇る美術館だということがよく分かります。

上の写真は当時ヨーロッパで有名であったイタリアの彫刻家アントニオ・カーノヴァが制作した大理石のテセウス彫像です。美術史美術館の大階段ホールに展示されています。

この彫刻は英雄テセウスが、上半身が人間で下半身が馬であるケンタウルスを退治している場面を表していて躍動感に溢れた力強い作品です。

ピーテル・ブリューゲル

この美術史美術館の見学の中で最大の収穫はオランダの画家ピーテル・ブリューゲルの絵画をたくさん鑑賞することができたことです。それもそのはずで美術史美術館には、世界最大の規模を誇るブリューゲルの作品群が展示されていてまさにこの美術館の目玉になっているそうです。

農民の生活や働く様子などを数多く描いたことから「農民画家」とも言われるブリューゲルですがその素朴なタッチがとても素敵で私の好きな画家のひとりです。

代表作「バベルの塔」、「農家の婚礼」、「子供の遊戯」、「雪中の狩人」など、ブリューゲル作品の4分の1がここに集まっているそうです。これらの作品は幼いころから学校の美術の本などで何度も目にしてきた有名な作品です。

特に「バベルの塔」は圧巻でした。初めて実物を目の前にした感激でしばらくその絵を見つめ続けました。原画サイズは114×155cmということですが現物は予想より大きくて迫力のある絵だと思いました。

バベルの塔の物語は「人類が天まで届く塔をつくり神に挑戦しようとしたので、神は人々がしゃべる言葉を混乱させて塔を崩した」ということですが、そのような神話が実際現実に起こった出来事だと思わせるような出来栄えの絵でした。

ウィーンおよび郊外の風景

ウィーンを観光していると色々なところで綺麗に整えられた花壇を多く見かけます。ヨーロッパの人は日本人より花を愛でる人が多いとよく聞きますがまさにその通りでした。街を散策していてもとても心が休まる思いです。美しい花壇の前では思わず足を止めてカメラを向けていました。

    

下の2枚の写真はウィーン郊外にある湖のリゾートの風景で、観光バスで移動中その湖畔にあるレストランに立ち寄り昼食をいただきました。ウィーンの人々は、休日にはこのような風光明媚な湖にヨットを浮かべて家族や友人と過ごすという優雅な生活をしているのでしょうか。

下の写真は観光バスの窓から近くの民家を撮影したものです。ベランダにはやはりたくさんの花々が綺麗に飾られていました。

ザルツブルク観光

オーストリア西部の街ザルツブルクは塩によって栄えた街で、都市名は「塩の城」という意味だそうです。「ザルツブルク市街の歴史地区」として世界遺産に登録されています。

モーツァルトの出身地でザルツブルク音楽祭をはじめ連日多くの演奏会が催されるなど、ウィーンと共に「音楽の都」とも呼ばれています。

ホーエンザルツブルク城

丘の頂には堂々としたホーエンザルツブルク城がそびえたち、街の中心を流れるザルツァッハ川と旧市街地の風景は、19世紀の探検家アレクサンダー・フォン・フンボルトに「世界で最も美しい街」といわしめた風格があります。

丘の上のお城、麓の旧市街そして街を流れる川の風景はドイツの人気観光都市ハイデルベルグに類似したものがあります。このように3拍子そろったバランスの良い美しい風景は私も最も好きな風景の一つです。

上の写真は旧市街地から丘の上のホーエンザルツブルク城を見た風景です。このお城はヨーロッパに残る中世のお城としてはかなり保存状態が良い方だということです。

上の写真は旧市街地の中心を流れるザルツァッハ川から丘の上のホーエンザルツブルク城を見た風景です。

上の写真は丘の上のホーエンザルツブルク城から旧市街地を眺望した風景です。

今回の団体ツアーでは、ザルツブルク市内観光や夕食が終わりホテルにチェックインした後、自由行動としてホーエンザルツブルク城で開催された夜の弦楽四重奏のコンサートへ行きました。

コンサート場は城の中の少し狭い部屋でしたが席はすでに多くの人で埋まっていました。このような特別なムードのある環境で生演奏を聴くのはとても贅沢な気分になれるものです。

聞くところによるとほぼ毎日のように頻繁にコンサートが執り行われていて、観光客というよりもほとんど地元の人々が日々の習慣のように聞きに来ているとのことでした。

さすがに日本とは大違いで、人々がクラシック音楽を日常に身近に取り入れたハイセンスな生活を満喫していることに感銘を受けました。

ミラベル宮殿と庭園

ミラベル宮殿には1690年にフィッシャー・フォン・エルラッハ設計により作られた美しいミラベル庭園があります。

シンメトリーにデザインされた庭園内には、ギリシア神話の神々の彫刻が並び、「ペガサスの噴水」の周辺が映画『サウンド・オブ・ミュージック』の舞台になったことからその美しさが世界中に知られることになり、現在大人気の記念撮影スポットになっています。

上の写真はミラベル庭園からミラベル宮殿を見た風景です。

上の写真はミラベル庭園から遠くにホーエンザルツブルク城を眺望した風景です。ミラベル庭園の花壇は赤色と黄色の花が見事な幾何学模様で飾られていて背景の緑色の芝生と対比してとても印象深い情景となっています。

ザルツブルクではその他下の写真のような場所も含めて市内観光をゆっくりと楽しみました。

   

ザルツブルク旧市街の様子(左上)と広場で開催されている市場(右上)

   

立派な噴水があるレジデンツ広場(左上)とザルツブルク郊外の民家の様子(右上)

インスブルック観光

インスブルックはアルプスの美しい山々に囲まれ、ドイツとイタリアを結ぶ宿場町として古くから栄えた中世の面影を今に留めるチロル州の州都です。

1964年と1976年に2度冬季オリンピックを開催したウィンタースポーツのメッカで、夏はハイキングなどを楽しむ人も多く人気のリゾート地になっています。

下の2枚の写真はアルプスの山々を背景にした旧市街の絵画のような素敵な風景です。

下の写真は街のランドマークにもなっている「黄金の小屋根」です。左側は「黄金の小屋根」があるバルコニー前の広場の様子です。また右側はそのバルコニーのズームアップ写真です。

    

このバルコニーは、神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世がビアンカ・マリア・スフォルツァと結婚したことを記念し、祭りを見物するために1500年に建築されたということです。

「黄金の小屋根」と呼ばれるこのバルコニーの屋根には2,657枚の金箔を貼った銅製のタイルが張られており、その美しい輝きが多くの人々を魅了しています。これは当時のチロルの富と繁栄の象徴として伝わっています。広場は当日もたくさんの見物客で賑わっていました。

観光では冬季オリンピックで使われたスキーのジャンプ台にも行きました。冬季には現在もまだ使用されているようで綺麗に整備されていました。

下の写真は私たちが宿泊したホテルの周辺の通りの様子です。可愛いホテルやお店が立ち並んでいます。空き時間に少し周辺の散策も楽しみました。

最後に

今回のオーストリア観光ではウィーン、ザルツブルク、インスブルックの3都市を訪れましたが、どこもアルプスの美しい山々、趣のある旧市街、そして綺麗に飾られた花々を楽しむことができました。

どこの街も隅々まで綺麗に掃除・手入れが行き届いているようで、観光での散策がとても快適でした。国として観光産業には力を入れているように思えました。

今回の旅行で特に印象に残ったのは世界に誇る美術史美術館でブリューゲルの素晴らしい作品をたくさん鑑賞できたことと、ザルツブルク城という理想的な環境で地元の人たちと一緒に夜に感動的なコンサートを聴けたことです。

音楽と花が人々の生活にごく自然に溶け込んでいる様子はなかなか素晴らしいことだと思います。このことがオーストリアが世界でも幸福度が高い国の一つだという要因の一つになっているのではないでしょうか。

ちなみに国連の2020年度の世界幸福度ランキングではオーストリアは9位で日本は残念ながら62位だそうです。

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