イエローナイフのオーロラ鑑賞の旅(1)

はじめに

9月の中旬にカナダのイエローナイフでオーロラを見るツアーに参加しました。この記事ではその時の様子をご紹介したいと思います。その前になぜこのツアーに「たまたま」参加することになったのかを書きたいと思います。

このツアーに参加することになった偶然の経緯

もともとはこの8~9月の旅行の予定として8月下旬にスイスのツアーに行くことになっていました。ところが当時運悪くイスラエルやイランなど中東の情勢がとても怪しくなってきて旅行の数週間前から国際ニュースがとても気になるようになりました。

実は運の悪いことに私たちのツアーで搭乗する予定の航空機はカタール航空だったのです。航空機は成田からまず中東のドーハに行き、そこで乗り換えてスイスへ行くのですがその時になんとイラクの上空を突っ切っていく航路になっていました。

日本からスイスへ行く航空機は北極海周りのものもたくさんあるのですが、ツアーの内容が希望に近かったのでこのツアーを選びました。半年以上前にこのツアーを予約した時にはまさか中東がこのような事態になるとは予想できませんでした。

世界の航空機の現在の位置や航路をリアルタイムで見ることができるサイトを何度も確認していましたが、カタール航空が航路を変更する様子がまったくなく、またカタール航空の窓口に電話で問い合わせてもはっきりとはしませんでした。そのためツアー開始の3日前(キャンセル料が20%の期限)になってキャンセル料約27万円を支払って残念ながらこのスイス旅行をキャンセルしました。

その後このキャンセルしたスイス旅行の代わりに、9月に今からどこか面白そうな海外旅行へ申し込めないかと色々なツアーを探したのですが、期日が迫っていたのでほとんどのツアーがすでに満席や受付終了になっていました。

それでもあきらめずにWEBを見ているうちにたまたま「イエローナイフの夏のオーロラ鑑賞ツアー」を見つけました。出発まですでに1か月を切っていましたが、なぜかまだ募集をしていましたので急遽申し込みました。

夏のオーロラ鑑賞

オーロラ鑑賞は以前から興味はありましたが、真冬の北欧やカナダに行って零下30~40度の雪と氷の野外で何時間もオーロラが現れるのを待たなければならないとよく言われていました。そのために今まで躊躇していました。

しかしこのツアーに参加するにあたって色々と調べたら、オーロラは北極と南極付近に現れ、北極付近では北緯65~70度付近のエリアであるオーロラベルトに年中出現していることが分かりました。真冬が観察に適しているのは、夜が長い、晴天率が高いなど条件が整っているからでした。

カナダのイエローナイフはオーロラベルトのほぼ真下に位置していて、夏は夜が短いものの、晴天率も高いようで、周りに山がないので雲が出てもすぐに風に流されてしまい少し待っていると晴れてくるということです。オーロラ観察には十分な条件がそろっているということでした。

オーロラとは

オーロラはローマ神話の暁の女神「アウロラ」の名に由来するそうで、17世紀ごろからそのように呼ばれるようになったそうです。

太陽から「太陽風」というプラズマの流れが常に地球に吹き付けてきていますが、地球の磁場に影響されて太陽とは反対側にプラズマが流れてきてたまってくるそうです。それが何かのきっかけで極地へ流されて、大気の酸素原子や窒素原子に衝突しエネルギーを与え、それらの原子が元のエネルギー状態に戻る時に光を放つことでオーロラが発生するそうです。そのため特に南極や北極付近で見られることになるということです。

オーロラの色ですが、空気の薄い高度200~500㎞地点では赤色に発光し、その少し下の高度100~200㎞の地点では酸素の密度が高いので緑色になり、さらに地上に近い80~100㎞では重たい窒素の密度が増えてきて紫やピンク色に発光するようです。そのためオーロラは虹のような7色ではなく3~4色に光ることになります。

オーロラは肉眼では実際にどのように見えるのか

オーロラにはその見え方にレベルが決められていますが、おおよそ次のようになっているようです。

レベル1:暗いオーロラで肉眼ではかすかに見えるか見えないかの状態

レベル2:動きが弱く明るくはないがオーロラと確認できる

レベル3:少し動きが分かり、はっきりとオーロラと分かる

レベル4:動き、色、形がはっきりと分かり、鮮明に見える

レベル5:空一面に広がる激しい動きのあるオーロラ(オーロラ爆発)

肉眼では、レベル3までは白い薄雲が空に広がったように見えるだけで、写真に撮ると初めて緑色のオーロラだと分かります。

レベル4や5では肉眼でも色が容易に識別できることが期待されますが、実際には非常にかすかな色合いが確認できる程度のことが多いようです。ただし非常にまれですがはっきりと数色の色を確認できるようなオーロラに遭遇することもあるとのことです。

皆さんと同様に子供のころからオーロラを知っていましたが、本や雑誌の写真で見るだけでしたので、鮮やかで綺麗な緑色や赤色などが美しいオーロラだけを見てきました。そのためにオーロラのそのイメージがそのまま記憶に残っていたので、今回のように実際に肉眼で見た時のオーロラの色が多くの場合ほぼ白色だということが分かったときは、そのギャップに軽く驚きました。

しかしほぼ白色でも天空を覆い激しく動く豪快なオーロラは、ある時は風にたなびく巨大なカーテンのように、ある時は元気よく天に上る昇竜のように、またある時はゆらゆらと燃え盛る巨大な炎のようにも見えて、見ている人々を大いに感動させてくれます。

やはりオーロラは一生に一度は現地で肉眼で見る価値が十分にあると思いました。

オーロラの撮影

オーロラ鑑賞は結局、肉眼で二度と同じ情景はないという貴重な大空の雄大なショーを楽しむのと、写真や動画に撮って緑や赤の美しい鮮やかな色彩を楽しむという二通りの楽しみ方があることになります。

そこで重要なのがオーロラ撮影へ向けたカメラやスマホの事前準備です。

カメラは一眼レフカメラがお勧めで、広角~超広角レンズ、三脚が必須です。オーロラは見上げた空の広い範囲を縦断して出現するので広い範囲をとらえることができる広角レンズが必要で、また長時間露出になるので手持ちでは無理でぶれないためには三脚が必須です。

広角レンズは焦点距離が40mm以下で、できれば20mm以下の超広角レンズがお勧めです。おおよそのカメラ設定としては、ISOが400~3000、絞りのF値は4以下、焦点は無限大、露出時間は2~20秒程度になるかと思います。これらの数値はもちろんオーロラの強さ・明るさや動きの程度によって変える必要があるので、本番では色々と設定を変えながら試し撮りをする必要があります。

スマホでは最近搭載されたナイトモードにするとうまく写真が撮れるようです。iPhoneでは被写体が暗い場合には自動でナイトモードになるようです。

ところでオーロラの動画撮影ですが、昔はプロが使用するような超高感度の特別なカメラが必要でしたが、最近の市販のカメラやスマホの性能が飛躍的に向上したので、私たちにでも気楽に動画が撮れるようになっています。自分のカメラではISOを12800にして30fpsでうまく撮影できました。また最近のiPhoneでもきれいに動画が撮れるそうです。

なお、オーロラ撮影では明かりが大敵なので、現地では真っ暗な状況での撮影となります。そのために三脚やカメラの設定など手探りで行うことになるので、その時に慌てないように操作は事前に練習しておく方が良いと思います。

私の場合は、カメラとレンズはいつも旅行に持参しているSONYのミラーレス一眼レフカメラα7RIII(重量:657g、大きさ:126.9x95.6x73.7mm、画素数:約4240万画素、イメージセンサー:フルサイズ)とSONYのズームレンズSEL24105G(24-105mm F4 約663g)を使いました。F値は最小で4、ズームレンズは広角の24mmで撮影しました。

三脚はこのツアーのために新たに小型軽量のものを購入しました。また折りたたみ椅子は過去に香港のカウントダウン花火を見に行ったときに使った携帯用椅子を持参しました。

イエローナイフのオーロラ鑑賞ツアー

今回の観光ツアーは9月中旬の4泊6日のエア・カナダ利用のツアーで、参加者が十数名とあまり多くはなくとても行動しやすい人数でした。オーロラを見るのが目的で、合計4回の夜のオーロラ鑑賞の機会がありました。昼間はイエローナイフの市内観光や散策、近郊のハイキングなどを楽しみました。

カナダのイエローナイフは世界でもっともオーロラの出現率が高いと言われている場所の一つで、3夜も見れば95%以上の確率でオーロラが観察ができると言われています。すでに記述したように夏でも十分に鑑賞を行えるので、寒さや雪に弱い人にはとてもお勧めです。

旅程1日目

成田空港にお昼過ぎの集合でした。お昼ご飯は提携しているANAのラウンジで名物のカレーと果物をいただきました。チェックインの時にANAのマイレージカードをだすとマイルを付けてもらえます。

下のGoogle Mapにあるように、目的地のイエローナイフは日本人観光客に大人気のカナディアン・ロッキーからほぼ北に約1,100Km離れた位置にあります。9月の気温は最低5度~最高15度程度ですので東京の冬の服装を準備しました。

下の地図で青線で示したように、まず夕方出発のエア・カナダでカナダのバンクーバーへ行きました。そこで飛行機を乗り換えてエドモントンへ行き、さらに飛行機を乗り継いでイエローナイフまで行きました。乗換空港でそれぞれかなり待ち時間があったのでイエローナイフのホテル到着時にはすでに夜になっていました。帰りはイエローナイフからバンクーバーへ行き、そこで乗り換えて成田まで戻ってきました。

成田~バンクーバー間での飛行機の座席は左下の写真にあるように個別に通路に出られ、フルフラットベッドになるシグネチャークラス仕様でした。右下はバンクーバー空港内で見つけた面白いオブジェです。

左下はイエローナイフ空港に到着した飛行機で、右下はその空港の預け入れ荷物受取場所の風景で、アザラシと白熊がお迎えしてくれました。実は空港で飛行機から降りて周りの空を見たときにすでにオーロラらしき白い影を確認することができました。初めて肉眼でオーロラを見ましたが、その時はなぜか間違いなくオーロラだと確信しました。

空港からすぐにクオリティ・イン・アンド・スィーツというホテルへと行きました(下の写真)。イエローナイフの街の中心部にあり設備が整った中規模のホテルでした。

夜にバスで到着した後、部屋で着替え、カメラ機材などオーロラ鑑賞の準備をしてすぐにホテルを出発しました。

バスでホテルから約30分の距離にあるオーロラビレッジという場所まで移動しました。このオーロラビレッジはイエローナイフ付近で最も設備が整ったオーロラ観察専用の施設です。イエローナイフに来た観光客はほぼ全員がオーロラビレッジに行くようでした。

初日の夜はホテルからバスでオーロラビレッジに行く途中ですでに空に大きなオーロラが見えていました。

オーロラビレッジには、21個のティーピー(先住民の移動式住居を模したオーロラ観賞時の待機場所)があり、ダイニングホール、ギフトショップ、トイレなどが完備されていて、オーロラ鑑賞用に5か所の丘が設けられていました。

左下はティーピーの外観で、右下は内部の様子です。正面に暖炉、左側にお茶の準備、そして4つのテーブルが置いてありました。

下はダイニングホールの入り口付近の様子です。ここには唯一水洗トイレが完備されています。

オーロラビレッジは最初の夜に施設のおおまかな説明と案内がありますが、オーロラ鑑賞の妨げになる懐中電灯の使用は最小限に抑えられ、道や施設の位置関係がつかみにくくて多少困りました。

私たちのティーピーに案内された後、みな暖かい服装やカメラ・三脚などの準備をしてそれぞれ好きなオーロラ鑑賞場所へと移動していきました。外は暗く転びやすいところが多いので注意しながら夜道を歩きました。

鑑賞用の丘にはすでに多くの人たちが陣取っていて、中には寝そべって空を眺められるデッキが用意されている場所もありました。このビレッジには感覚的に日本人観光客が8割、中国人観光客が2割の割合で来ていたようで欧米人などの観光客は全く見かけませんでした。

第1日目の夜にうれしいことにいきなりレベル4のオーロラが出現しました。下の写真は持参したiPhone 13 miniで撮影したものです。燃え上がる炎のようなオーロラを撮影することができました。

 すすでに述べたように肉眼で見るのと写真で見るのでは同じオーロラの色彩が全く異なっています。下の写真はたまたまですが、肉眼で見たオーロラとほぼ似たような色合いに写っています。肉眼ではこのようにほぼ白く見えます。

下の3枚の写真は一眼レフカメラで撮影したオーロラです。緑色と暗い赤色に輝いています。この時は多少オーロラの動きもあったようです。もう少しオーロラが明るいとうまく動画が撮れたかもしれません。当日は良く晴れていたのでオーロラと一緒に星も明るく輝いていました。

東京の冬くらいの寒さの屋外で長時間座ったり立ったりしながらオーロラが出るのを待つのはやはり多少疲れてきます。ときどきティーピーに戻って暖をとったり、お茶を飲んだりしてまた外で頑張るという状況でした。持参した折り畳みの椅子は小さくて座り心地が良くないので1日目で腰が少し痛くなり、2日目からはオーロラビレッジで無料で借しだしている大きめの快適な折りたたみ椅子を利用させていただきました。

オーロラビレッジには夜9:30分頃に到着して、鑑賞を終えてホテルに帰るのは深夜2:30頃ですので次の日のお昼頃までゆっくりと休むことになります。そのため朝食は抜きでお昼ごろにブランチをいただきます。

初日はとにかく色々とあわただしく、肉眼でオーロラを初めて見てもそれほど感動はしませんでした。本当に感動したのは多少鑑賞に慣れ落ち着いてきてレベル5のオーロラに遭遇した3回目の夜になります。

なお、オーロラビレッジは毎晩次から次へとたくさんのお客さんを収容し大繁盛している様子でしたが、係員のサービスはいかにも事務的で、深夜2時頃までの鑑賞時間なのに水洗トイレが11:30で閉まってしまうことや、ティーピーのお茶も早めに片づけられるなどもっと工夫の余地はあると思いました。

この記事は「イエローナイフのオーロラ鑑賞の旅(2)」へと続きます。

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