旅先で体験した小さな交流(1)

はじめに

海外旅行が趣味で若い頃から色々な国々を訪れています。今は主に先進国が中心ですが特に世界自然遺産などの風景が良い場所を好んで訪れています。

素敵な国や都市があれば何度も訪れるような旅行を楽しんでいます。

そのような海外旅行の折に、現地の人とまさに偶然にちょっとした面白い交流を体験することがあります。せいぜい数分か数十分程度のごく短い時間ですが、よく考えるとそれがとても面白くて奇妙な体験なのです。

日本に居れば決して起こりえないような経験になります。

過去何十年という間に色々な小さな交流の体験をしましたが、その中から強く印象に残っているものを少しご紹介したいと思います。

1.アメリカ合衆国のニューヨークにて

私がまだかなり若い頃一人ではじめてアメリカのニューヨークを訪れた時のお話です。当時ニューヨークは犯罪が頻発する少し物騒な街でした。

世界的に名を轟かせていたハーレム街が観光客などに敬遠されていた時代です。

空港に到着後タクシーでニューヨーク市のマンハッタンにあるグランド・セントラルという鉄道のターミナル駅へ行きました。当時この駅に行くのは初めてでした。

グランド・セントラル駅(右の写真は当該駅のホームページからの引用)はたびたびテレビなどで紹介されたり、また多くの映画やCMのロケに使われたりする有名な場所です。

ここには地下に40以上のプラットフォームがあり高い天井の広々としたメインホールを備えた巨大なターミナル駅です。

ちなみに有名なシーフード・レストランであるオイスターバーがあり、その後何度かそこでグルメを堪能したこともあります。

さて私は目的の列車に乗ろうとまずはチケット売り場でチケットを買いました。しかしあまりにも広い構内でどこへ行けばよいのかまったく分からずメインホールの中心ほどにある円形の案内所で行き方を尋ねました。

案内所の係りの人は、手馴れた口調でとんでもなく早口でプラットフォームの番号と列車の出発時間、それから行き方らしきことを言いました。さらに最後に「もうあまり時間がないよ!急いで!」とも言いました。

とにかくまったく初めてこの駅に足を踏み入れていたために、ニューヨークの鉄道システムや駅構内のことなどまったく知らない私は、一瞬戸惑ってしまいました。プラットフォームの番号も日本では考えられないような大きな番号でした。

すると突然すぐ後ろに居たアメリカ人らしき青年が、横に置いていた私の大きなスーツケースを掴んで後ろの方に去ろうとしました。

私はこれは「荷物の引ったくり!」だと一瞬緊張しましたが、その青年は「プラットフォームへ案内するからついて来きて」と言ったので安心しました。その極めて親切な青年は数分間私のスーツケースを持って小走りで先導し、無事にプラットフォームに着きました。

しかし残念ながら乗るべき列車はすでに出発した後でした。私はその青年に丁寧にお礼を言って別れました。

次の列車までその近くで30~40分程度待つことにしました。プラットフォームは地下にあり照明が少なく相当に薄暗い場所でした。

壁際にスーツケースを置いて待っているときのことです。その近くに陣取って(寝泊りして?)いたアメリカ人らしきホームレスの一人がゆっくりと近づき、話しかけてきました。

時間ももてあましていましたし、見ると怖い人ではなかったので大丈夫だと思いお話のお相手をしました。私が日本から来たと伝えると、彼も以前日本の大阪に出張で滞在したことがあり、日本語のあいさつの言葉なども少し覚えたということで、日本の街や食べ物など色々な話で予想外に盛り上がりました。

そしてあっという間に時間が過ぎて次の列車が来そうになったので、その場を離れようとしてふと周りを見渡すと、なんと今までお話をしていたホームレスの人の後ろにさらに2~3名ほど別のホームレスの人が、次に私と話をしたいと列をなして並んでいたのです

私はその光景にびっくりしました。

日本では絶対にありえない光景だと思いました。さすがに自由でバイタリティ溢れたアメリカのニューヨークだなといたく感心しました。

その時はもちろん並んでいた方々に「列車が来たので行かなくてはなりません。話せなくてごめんなさい。」といって別れました。

2.アメリカ合衆国のフィラデルフィアにて

以前アメリカに旅行で行ったときのことですが、ある日一人でフィラデルフィア美術館を見学に訪れました。

フィラデルフィア美術館はペンシルバニア州にあり、ギリシア風の壮大な美術館で全米有数の規模を誇っています。

中世から近代までのヨーロッパの絵画、彫刻、装飾品、武器、アメリカやアジアの各種美術品などが展示されています。

ここは現在、ツアーが出るほど有名な観光スポットになっています。

また大ヒット映画「ロッキー」のロケ地としても有名な場所です。この美術館の正面玄関の階段はロッキー・ステップ(The Rocky Steps)と呼ばれています。

これは映画「ロッキー」およびその続編で、主人公がテーマ音楽をバックに階段を駆け上がる場面があることから名づけられたそうです。

私はフィラデルフィア美術館の見学を終えた後、近くの鉄道の駅までバスで移動しようと思い、最寄のバス停まで歩いて行きました。

バス停で時刻表を見ると次のバスまではかなり待たなくてはなりませんでした。歩いて行くかどうするか迷っていたところ、同じように次のバスを待っていた一人のアメリカ人らしきシニアのご婦人が私に急に話しかけてきました。

「バスがなかなか来ないので駅まで歩いてい行きたいのだけれども、女性の一人歩きは危険ななのでどうしようかと迷っています。駅にいらっしゃるのならご一緒に歩いて行ってくれませんか?」

私も歩いても構わないと思っていたので「いいですよ!ではご一緒に行きましょう。」といって2人で歩いて行きました。

駅までは歩いて15分くらいはかかったと思いますが、そのご婦人は道を詳しくご存知のようで私も安心してついて行きました。途中適当に世間話など少ししました。

駅に近くなるとご婦人が少し怪しげな薄暗い建物の中に入っていったので心配になって尋ねたところ、「この道は近道なので安心してください。」と言われました。

私はこのご婦人に最後までついて行って本当に大丈夫(安全)なのかと少し不安になりましたが、最後にはちゃんと無事に目的の駅に到着し、お互いにお礼を言って分かれました。

このような事も日本では起こりえないことです。シニアのご婦人が見も知らずの外国人に向かって突然に駅まで一緒に歩いて行ってくださいなどとお願いすること自体に大変驚きました。

このことでアメリカのご婦人はさすがに実践的でかしこく、かつたくましく、実行力に溢れた方々だと感心しました。過去のアメリカ開拓時代をたくましく生き延びてきたご先祖のスピリットをちゃんと引き継いでいるのだと納得しました。

この記事は、旅先で体験した小さな交流(2)へ続きます。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする