アイスランド大周遊の旅(1)

はじめに

アイスランドと言えば長い間「火と氷の国」というイメージがありました。最近になって世界の観光スポットを検索するなかで、溶岩台地や豪快な滝などの写真が目立つようになっていたり、TV番組で間欠泉や温泉施設が紹介されていることもあり多少は関心を持つようになってきていました。

しかし林、森や草原の豊かな緑、湖や川のコバルトブルー、背景の白い雪を頂く山々などの「カラフルな」美しい絶景は見られないだろうということで旅行先の候補には加えていませんでした。

ところがごく最近になってアイスランド制作のTVドラマを2本(「トラップ凍える死体」、「湿地」)見る機会があり、刑事もののサスペンスでしたが、作品のできがとても良くて、ダークで魅力的ないわゆる北欧ノワールの代表作だと思ったことがありました。

舞台はレイキャビック郊外ですが湾に押し寄せている氷塊や、雪をかぶった壮大な山々、雪に埋もれた家々や道路など季節はなぜか真冬になっていました。多分アイスランドの厳しい冬を逆手にとって他の国制作のTVドラマとの風景・背景・雰囲気の差別化を図ったものだと思われます。

ドラマに出てくる人々の生活や風景がアイスランドへの興味をかきたてたことで結局今回のアイスランド旅行に繋がりました。

アイスランドについて

アイスランドは、イギリスの北端から北西に約1000kmの距離にある北海道と四国を合わせた面積の島国です。人口約38万人のうち約20万人が首都レイキャビクとその周辺に住んでいます。黒い玄武岩に覆われたユニークな地質、今も活発に続く火山活動、国土の約11%を覆う広大な氷河が特徴的です。

国土の一部が北極圏に含まれるという位置にありながら、カリブ海から流れてくる暖流と偏西風のおかげで、世界の他の同緯度地域に比べてはるかに温暖な気候となっているそうです。

アイスランド旅行ツアー

WEBで調べるとほとんどのツアーがレイキャビック市内と近郊のゴールデンサークルを巡るツアーですが、せっかくならアイスランド全土を観光したいと思い、まずアイスランド島を一周するクルージングツアーを検討しました。

しかし、上陸しての観光は主に午前中だけで、お昼ご飯と午後は船に戻って過ごすようになっていたので合計の観光時間が少ないということや、船で移動中の海から見る風景は陸路に比べて少し飽きてしまうだろうということが予想されたので、結局今回は陸路でアイスランド島を一周するツアーを選びました。

参加したツアー

今回のツアーは、6月中旬に8泊10日の行程で観光バスで国道一号線(リングロード)を反時計回りにアイスランドを一周しながら観光をするというものでした。参加者は十数名で行動しやすい人数でした。

お天気は雨、曇り、晴れと色々でしたが、観光自体は十分に楽しめました。

旅程の概要

羽田空港からまずデンマークのコペンハーゲンへ行き、そこで飛行機を乗り換えてアイスランドのケフラヴィーク空港へ行きました。最初の夜は空港近くのホテルに宿泊して次の日から観光が始まりました。

観光1日目はアイスランドの居住地域を結ぶ重要な道路である国道一号線(リングロード)を走り、2つの滝、氷河、パフィン居住の海岸を観光しゲイルランドのホテルに宿泊しました。次の日は氷河湖クルーズや氷河の氷床上陸体験を楽しみました。

続いて東海岸の火山・地熱活動が活発なミーヴァトン地方へ行き、ヨーロッパ最大の滝、ミーヴァトン湖、地熱エリアを観光しました。また次の日も疑似クレーター地区、溶岩迷路、地球の割れ目などへ行きました。

次の日は神の滝、アイスランド第二の街アークレイリ、美しい教会に立ち寄りながら最後の観光地であるレイキャビックへと向かいました。

レイキャビックのホテルに宿泊後、黄金の滝、間欠泉、シンクヴェトリル国立公園、地球の割れ目、世界最大の温泉露天風呂ブルーラグーン入浴を楽しみました。

観光最終日はレイキャビック市内観光とパフィン観察クルーズを楽しんだ後、夕方にケフラヴィーク空港へ行ってコペンハーゲンへ行きました。コペンハーゲンには宿泊しただけで観光はなくて次の日の朝にコペンハーゲン空港から羽田行きのフライトで帰国しました。

下にアイスランドの観光ルートの地図を掲載します。アイスランド西部にあるケフラヴィーク空港(赤色の四角枠)からバスは出発し、国道一号線を使って反時計回りに、ホテルオルク1泊、ホテルゲイルランド1泊、ホテルフラムティッド1泊、セルホテル2泊、グランドホテルレイキャビック2泊と宿泊して最後はまたケフラヴィーク空港へ戻ってきました。ホテルはオレンジ色の四角で囲っています。ツアーで立ち寄った観光スポットは地図上に黒字で記入しています。

旅程1日目

羽田空港のお昼前発のスカンジナビア航空で北極海周りでコペンハーゲンへと行きました。

スカンジナビア航空はビジネスクラスでしたので羽田空港のラウンジはパートナーのANAのラウンジが使えました。夕方にコペンハーゲンに到着しそこでアイスランド航空に乗り換えて夜中にアイスランド西部のケフラヴィーク空港へ着きました。そこからバスで近くのホテルへ向かいましたが到着は日付をまたいでいました。次の日の観光の出発が朝早かったので結局3~4時間くらいの短い睡眠時間となりました。

下の写真は宿泊したホテルオルクです。

旅程2日目

朝ホテルをバスで出発し、最初の観光地としてまずセリュアントスフォスの滝を目指しました。

滝までの道中の風景を動画で撮りましたので2本ご紹介します。今回のバス旅行では連日車窓から珍しい、面白い、または美しい風景をたくさん見ることができたのでいつもより多くの動画を撮りました。

次の動画では画面の遠くに崖からセリュアントスフォスの滝を含む複数の滝が流れ落ちているのが写っています。

セリュアントスフォスの滝

この滝はアイスランドにあるたくさんの美しい滝の一つで、落差40mですが、季節、時間帯、太陽光の状態で色々な魅力的な表情を見せる人気の滝です。

滝壺の裏側には洞窟があり、それに沿って回り込むと豪快な滝を裏側から見ることができます。滝つぼの周りを一周する遊歩道(大部分は石がごろごろしている道)がありますが、風向きによってはまともに水しぶきを浴びて全身ずぶぬれになりますのでカッパなどの雨具は必須です。

下の写真は滝を横から見た風景です。これはよく旅行のパンフレットなどに使われている写真の風景です。

滝の裏側に回り込んで撮影した景色です(下の写真)。

下は遊歩道を歩いて滝の反対側に出たあたりで見た滝の風景です。

当日は遊歩道の足元も悪く、また大量の水しぶきがかかっていたのでガイドさんから滝の向こう側まで行かずに途中で引き返した方が良いといわれていました。しかし大勢の観光客が細い遊歩道に次々と押し寄せていたので途中で逆方向に戻ることはほぼ不可能と思い、結局濡れながら滝を一周しました。

動画で見るとこの滝の豪快さがリアルに伝わると思います。下に4本の動画を掲載します。

最初は駐車場から滝への遊歩道を歩いていく様子です。

次は滝の右側あたりから見た風景です。多くの人が濡れながら滝の裏側へ通じる道を上っていっていました。

3本目は滝の裏側から見た風景です。轟音と共に豪快に流れ落ちる大量の水がマイナスイオン満載の感じでとても爽快でした。

最後は滝の向こう側に回り込んで外に出た時に撮影した動画です。

ところで滝を裏側から見ることができる「裏見の滝」は珍しいと思いますが、約3週間前に熊本県の阿蘇山で鍋ケ滝という滝を裏側から見てきたばかりでした。これも何かの縁だと感じています。

次に観光バスで向かったのはスコウガフォスの滝です。

途中の車窓の風景を2本動画でご紹介します。

最初は荒々しい山々の風景です。麓には牧場も見えていました。

次の動画の画面の遠くには目的地のスコウガフォスの滝が見えています。

スコウガフォスの滝

このスコウガフォスの滝はアイスランド南部を代表する大きくて美しい滝の一つです。アイスランド語で「スコウガフォス」は「森」を示す「スコウガ」と「滝」を表す「フォス」が組み合わさった言葉です。

この滝は全幅は25mで高さは60m以上にもなり、60mという高低差はアイスランドでも屈指の規模です。晴れた日にはよく虹がかかるそうです。

下の写真で分かるように、右の方から丘の上まで遊歩道が整備されていて、頂上の展望台からは滝の上が見学できます。またこの滝の裏側には昔のバイキングの秘宝が隠されているという伝説も伝わっているそうです。

スコウガフォスの滝の動画を3本掲載します。

最初は滝を目指して歩いていく様子です。

次は滝のそばまで行って撮影した動画です。高さがあるので滝の美しさが際立っています。また豪快な音も聞こえてきます。頭上には数羽の野鳥が空を飛んでいました。

最後は、帰りに周りの景色も含めて撮影した動画です。

スコウガフォスの滝の見学の後は近くのレストランで昼食をとりました。

左下は前菜の野菜スープで、右下はメインのタラの白身魚のソテーの料理です。

昼食の後、バスはソゥルヘイマヨークトル氷河へ向けて出発しました。

道中の車窓から風景を動画で撮影しました。とても寒々しい荒野が続いています。

ソゥルヘイマヨークトル氷河

この氷河はアイスランド南海岸にあるミールダルスヨークトル氷冠から流れ出る出口氷河です。レイキャビクから約160Kmの距離にあってアクセスが容易なために、特に氷河ハイキングやアイスクライミングに最適な場所として観光客にとても人気があるそうです。長さ約8Km、幅約2Kmの氷河ですが温暖化により急速に縮小していっているようです。ちなみに「ヨークトル」はアイスランド語で「氷河」を意味します。

駐車場から遊歩道を歩いていく様子を動画で撮影しました。

遊歩道の途中ですが氷河の末端部分が眺望できるポイントで動画を撮りました。

下は遊歩道の一番奥にある展望台付近から撮った写真です。氷河の全体が黒ずんでいるのは火山による土壌の影響だといわれているようです。自然現象ではありますが美しさの点からは少し残念な光景になっています。

駐車場付近ではオレンジ色の服を着て重装備をした氷河ハイキングのグループを何組か見かけました。

次に向かったのはディルホウラエイ岬です。

ディルホウラエイ岬に行く途中で車窓から見た風景が荒々しくも面白かったので動画に収めました。

ディルホウラエイ岬

ディルホゥラエイは長さ約120メートルの岬でアイスランド南海岸を一望できる名所です。アイスランドの国鳥である可愛いパフィンなど野鳥がたくさん見られ、また天然の岩のアーチや黒砂海岸も親しまれています。

下の写真の岬の先端付近に2か所天然の岩のアーチがありますが、左側のものは穴の部分が黒く見えていて、右側のものは水面近くに少しだけ向こうの空が見えています。

パフィンを探しましたがあまり見かけなくてときどき空を速いスピードで飛ぶ姿が見られる程度でした。

下の写真は反対側の海岸の風景です。遠くには有名な黒砂海岸レイニスフィヤラや一番右側にはレイニスドランガルの海食柱が並んでいるのが見えます。

この付近で周囲の景色を動画で撮りましたので下に掲載します。

ディルホウラエイ岬の観光を終える頃急にお天気が悪くなって雨が降ってきたので急いでバスへ戻りました。

下の写真は次のホテルへ向かう途中に車窓から撮影した紫のルピナスの群生地です。今回の旅行ではあちらこちらでたくさんの綺麗な群生地を見ることができました。これらの美しい花は通常6月上旬に咲き始め6月下旬から7月上旬まで続くそうです。

このアラスカルピナスは、1945年にアイスランドに導入された紫色の花を咲かせる外来の植物です。 導入当初は、地表を守り、その後土に還り、土壌を肥やすので、溶岩台地の土壌浸食を防ぎ、乾燥地帯の再生を助けるという実用的な目的があったそうですが、予想以上に急速に広がったため現在では在来植物、特にアイスランド苔の領域をも侵略しつつあるそうです。

そのため庭を持つアイスランド人はルピナスを庭で見つけると直ちに根こそぎ駆除してしまうくらいに嫌っているそうです。アイスランドの広大な黒ずんだ大地に綺麗な紫のルピナスが咲き誇る風景はとても素敵だと思いますし、6月上旬にルピナスが咲くと夏の訪れを告げるメッセンジャーにもなっているということもありますので、うまく共存していくことを期待したいものです。

このルピナスの群生地など面白い車窓風景を動画で撮影しましたので下に掲載します。

なおバスが途中休憩した場所の近くで「ブラックサンドビーチ」の看板を見つけたので浜辺まで行ってみました。

左下の黒砂海岸の遠方にはレイニスドランガルの海食柱と思われる奇岩が見えていました。また黒砂海岸に沿った遊歩道では乗馬体験のグループが乗馬を楽しんでいました(右下の写真)。

 

ところで黒砂海岸と言えば、日本の近くではハワイ諸島のハワイ島にあるプナルウ黒砂海岸が有名です。野生の海亀さんたちが甲羅干しに来る場所になっていて観光客に大人気のスポットになっています。

夕方に次の宿泊先で、アイスランドの南部にあるホテルゲイルランドへ到着しました(左下の写真)。右下は夕食のサラダです。

夕食のメインは左下のアイスランド名物のラム肉料理でした。

このホテルはかなりの田舎にあるようで、下の写真は部屋の窓から撮影したホテルの裏側の風景(絶景?)です。とにかく何もありませんでした。

昨夜は睡眠時間が少なかったので、このホテルではようやくゆっくりと寝ることができました。

この旅行記は「アイスランド大周遊の旅(2)」へ続きます。

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