中国語は面白いー付属形態素と区別詞

はじめに

中国語のお勉強を始めると色々と中国語の面白い面が見えてきます。

最も面白いのは、日本語に似ているようで似ていない、また似ていないようで似ているという微妙なところです。

中国語を木にたとえると、「幹」の部分すなわち基本語順は英語のSVO(主語ー動詞ー目的語)と同じですが、「枝」~「葉」の部分ではかなり日本語に似てきて、「葉」(単語)のレベルではほとんど同じというものがたくさんあります。

このブログでは、このような中国語の面白いところを追い追いご紹介していきたいと思います。

なおこれ以降、日本語は ’ (シングルクオート)で囲って、一方中国語は ”(ダブルクオート) で囲って区別して表すことにします。

中国安徽省 黄山の断崖の風景

付属形態素

’春’、’夏’、’秋’、’冬’という日本語はご存知の通り日本ではそのまま単独で名詞として使えます。

たとえば、’春が来た。’、’東京の夏は暑い。’ などです。

ところが文字も意味も同じなのに、中国語ではこれらの言葉は独立して単独では名詞として使えません。

’春が来た。’、’東京の夏は暑い。’ という意味を表すのに中国語で、”春来了。”、”东京的夏很热。” とすると”春”、”夏”は間違った使い方になります。”秋”、”冬”も同様です。

このような中国語の言葉は、付属形態素などと呼ばれて単独では名詞として使うことが出来ず常に他の言葉と結合されて使うことになります。

”春”、”夏”、”秋”、”冬”の場合は、後ろに”天”が付いて、”春天”、”夏天”、”秋天”、”冬天”としてはじめて名詞として使えます。

上の例では、”春天来了。”、”东京的夏天很热。” が正しい中国語になります。

日本語の’石’や’木’も中国語では付属形態素でこの場合は”头”が付いて”石头”や”木头”となってようやく名詞になります。

付属形態素の後ろに付いて名詞を作る語「名詞化接尾辞」でよく見られるのは、”头”の他に”子”、”儿”です。付属形態素には上のように日本語と文字も意味も同じものもありますが、もちろん意味が違う言葉もあります。

付属形態素が名詞化された例をもう少し挙げておきます。

”孩子”(’子供’)、”院子”(’庭’)、”房子”(’家’)、”空儿”(’暇’)などがあります。

ところで、「付属形態素+名詞化接尾辞」の言葉で中国語が日本に伝わるときに名詞化接尾辞”子”が付いたままと思われる言葉が多く見受けられます。

たとえば、次のような皆さんお馴染みの言葉です。

”椅子”⇒’椅子’、”饺子”⇒’餃子’、”勺子”⇒’杓子’、”帽子”⇒’帽子’、”桌子”⇒’卓子’、”扇子”⇒’扇子’

なお、”头”や”儿”が付いたままの言葉は日本語には残っていないようです。

私も子供の頃からなぜ日本語の名詞で後ろに’子’が付くのが多くあるのか不思議に思っていましたが、これで理由がはっきりしました。

ちなみに上の例の”桌子”⇒’卓子’は日本語になったときに少し意味がずれて、今日本語で’卓子’は一般的な机やテーブルを表すというより、医療などの現場で使われるワゴン「器械卓子」という狭い意味で使われるようになっているようです。

また長崎には昔中国から伝わった料理で「長崎卓子料理」というものがあるそうです。

ところで先ほど、日本語の’石’が中国語では”石头”であると書きましたが、実は”头”は元々’頭’という意味です。中国語では頑固者の’石頭’のことをどう言うのでしょうか、あえて言うと”石头头”のような奇妙な言葉になってしまいます。

ちょっと調べて見ましたが、さすがに”石头头”という言葉は中国にはなく、頑固者のことは”死脑筋”や”花岗岩脑袋”などと言うようです。

区別詞

中国語には先ほどご紹介した付属形態素と少し似たような振る舞いをする区別詞というものがあります。他の言葉と結合されて始めて名詞(句)として使えるというものです。

中国語としては品詞的には非述語形容詞で区分・分類を表すものです。

たとえば、男、女、金、銀があります。日本語の’男’、’女’、’金’、’銀’はもちろん名詞として単独に使われます。

一方、中国語の”男”、”女”、”金”、”银”は区分詞(形容詞)ですのでこのままでは使えません。あえて日本語に直訳すると’男の’、’女の’、’金の’、’銀の’です。

”男子”や”男的”、”女子”や”女的”、”金子”、”银子”となってはじめて’男’、’女’、’金’、’銀’と同じ意味で名詞として使えます。

金、銀以外の金属たとえば”铜”(’銅’)、”铁”(’鉄’)、”锡”(’錫’)の場合は日本語と同じ名詞なのでこのまま使えます。

その他このような区分詞は区分・分類を表すので、ペアのものが多いです。たとえば、”正”と”副”、”单”と”双”、”新式”と”旧式”、”短期と”长期”、” 急性”と”慢性”、”初级”と”中级”および”高级”、”小型”と”中型”および”大型”などがあります。

”单”と”双”は中国出張が多い方におなじみの言葉、”单人房”(シングルルーム)、”双人房”(ツインルーム)のように使われています。

なお、上で挙げた、”初级”と”中级”および”高级”のうち、なぜか”高级”についてはそのまま形容詞として使えます。たとえば、

”这个旅馆真高级!”(’このホテルはとても高級だ!’)

のように使えます。

ところで上で挙げた”男子”と”女子”についてもう少し日本語との関係を見てみたいと思います。

皆さんご存知のように日本語としても’男子’と’女子’があります。男の子、女の子と子供のことを指す場合が多くイメージ的にもそのように感じますが、辞書を見れば分かるように大人の男性、大人の女性の意味もちゃんとあります。

たとえば、男子バレー、女子バレー、男子トイレ、女子トイレ、○○女子大学、女子会など大人も含めた男性、女性という意味でちゃんと使われています。

昔中国からは、これらの中国語の”男子”(’男性’)と”女子”(’女性’)がそのまま日本へ伝わって来たものと思われます。

もう一つ興味あることを記しておきたいと思います。

先ほど中国語では’金’のことは”金子”としてはじめて名詞として使えると書きましたが、日本語にも皆さんご存知のように’金子(きんす)’という言葉があります。

その意味は、金貨、おかね、金銭などです。

子供の頃からなぜ’金子’という言葉には’子’が付くのか不思議でしたが、昔から’金’を使って金貨としておかねを流通させることが多かったので中国から伝わった”金子”(’金’)がほぼ似たような意味をもったまま’金子’として残っているのではないでしょうか。

中国語は面白い!

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