中国語は面白いー逆転2字漢語

はじめに

中国語の面白いところは、日本語に似ているようで似ていない、また似ていないようで似ているという微妙なところです。

このブログでは、私が学習していく中で気がついた中国語の面白いところをピックアップしてご紹介しています。

なおこれ以降、日本語は ’ (シングルクオート)で囲って、一方中国語は ”(ダブルクオート) で囲って区別して表すことにします。

逆転2字漢語

中国語を勉強している日本の人や日本語を勉強している中国の人は必ず気がついて、とても不思議に思うことがあります。

意味がほぼ同じ2字漢語(2つの漢字が合わさった漢語)が中国語と日本語で前後の漢字が逆転しているということです。最初は何かのミスではないかと思ったりもするそうです。

たとえば、中国語で”介绍”は日本語では’紹介’、また中国語で”命运”[”运”の旧字体は”運”]は日本語では’運命’となっています。

調べて見ると次のようなケースがあるようです。

  1. 中国語で1つの漢語が日本語でその逆転漢語に対応
  2. 中国語で1つの漢語が日本語で1組の漢語(1つの漢語とその逆転漢語)に対応
  3. 中国語で1組の漢語(1つの漢語とその逆転漢語)が日本語で1つの漢語に対応
  4. 中国語で1組の漢語(1つの漢語とその逆転漢語)が日本語で同じ1組の漢語に対応

それぞれ例を見ていきたいと思います。

1.中国語で1つの漢語が日本語でその逆転漢語に対応

”介绍”(’紹介’)、”狂熱”(’熱狂’)、”侦探”(’探偵’)

意味は中国語と日本語でどちらもほぼ同じです。ただし品詞には違いがあり、”介绍”は動詞・名詞で’紹介’は名詞・サ変動詞です。”狂熱”は形容詞で’熱狂’は名詞・サ変動詞です。また”侦探”は動詞・名詞で’探偵’は名詞・サ変動詞です。

日本へ来たアニメ好きの中国の人が、「名探偵コナン」というタイトルを見て’探偵’の文字がひっくり返っていると驚いたという話を聞いたことがあります。

2.中国語で1つの漢語が日本語で1組の漢語(1つの漢語とその逆転漢語)に対応

”命运”(’運命’・’命運’)

意味は中国語と日本語でどちらもほぼ同じです。品詞もすべて名詞です。

3.中国語で1組の漢語(1つの漢語とその逆転漢語)が日本語で1つの漢語に対応

”合适”・”适合”(’適合’) [”适”の旧字体は”適”]、”领受”・”受领”(’受領’)

”痛苦”・”苦痛”(’苦痛’)、”相互”・”互相”(’相互’)、”语言”・”言语”(’言語’)

”借贷”・”贷借”(’賃借’)、”肠胃”・”胃肠”(’胃腸’)

意味は中国語と日本語でどちらもほぼ同じです。

4.中国語で1組の漢語(1つの漢語とその逆転漢語)が日本語で同じ1組の漢語に対応

”和平”・”平和”(’和平’・’平和’)、”爱情”・”情爱”(’愛情’・’情愛’)

意味は中国語と日本語でどちらもほぼ同じです。

上のような色々な変化が起きた理由は、

  • 中国の中で逆転した
  • 中国から日本へ伝わるときに逆転した
  • 中国が日本から逆輸入したときに逆転した
  • 日本の中で逆転した
  • 両方使われていたが一方だけ使われなくなった

などの事情が複雑に絡み合ったからだと思います。

一説では、明治以降日本が西洋の新しい言葉、概念を日本語に翻訳しようとしたときに、元々中国にあった適当な2字漢語を探して、あえて前後を逆順にして新しい意味を持った2字漢語を作り出したということです。

これが真実であれば現在日本や中国に逆順の2字漢語がたくさんあってもまったく不思議ではないと言えます。

日本語は「岩波国語辞典(第7版)」、中国語は「現代漢語詞典(第6版)」を対象としたある網羅的調査(「日本語と中国語とで字順の逆転する二字漢語」日本語研究 34, 71-84, 2014-06-30 )によると上の分類のうち1のケースに相当する漢語は全部で346組あったということです。

これらのうち意味がほとんど同じか一部共通している漢語は189組(55%)で、意味がまったく違う漢語は157組(45%)あったとのことです。

意味がまったく違う漢語の例は、”叫绝”(’絶叫’)があります。中国語で”叫绝”は「喝采する」という意味の動詞です。

面白い話をひとつご紹介します。

皆さんパンダの中国語は”熊猫”(発音は’シォンマオ’)ということはすでにご存知だと思います。このまま日本語に翻訳すると「くまねこ」となります。パンダはどう見てもネコではないと思います。

パンダは実際に調べて見るとやはり「食肉目クマ科」に属するクマです。そうすると”熊猫”ではなく本来”猫熊”とすべきなのではないでしょうか。

辞書を見てみるとやはり”猫熊”「ねこくま」の漢語も残っていました。意味はほぼ同じとあります。

ある説によると、昔中国国内でパンダを紹介する書物で間違って順序を逆にしてしまったそうです。その間違ったままの”熊猫”のほうが広まってしまい、現在こちらが主に使われているようです。

言葉というものはちょっとしたきっかけで変遷していくもののようです。

最後に

中国語と日本語とで逆転した2字漢語が多く見られますが、予想に反して、意味がある程度同じものは55%しかありません、残り45%は意味がまったく違い共通するところがないものです。

さらにたとえ意味がほとんど同じでもそれらの品詞にずれがあることが多いです。

結局は表面的な漢字の共通性に惑わされず、お互いに外国語としてしっかり詳細まで理解する必要があるということになります。

今日の記事は、「中国語は日本語に似ているようで似ていません」という側面にも皆さん注意しましょうということです。

中国語は面白い!

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