中国語は面白いー量詞と助数詞

はじめに

中国語の面白いところは、日本語に似ているようで似ていない、また似ていないようで似ているという微妙なところです。

このブログでは、私が学習していく中で気がついた中国語の面白いところをピックアップしてご紹介しています。

なおこれ以降、日本語は ’ (シングルクオート)で囲って、一方中国語は ”(ダブルクオート) で囲って区別して表すことにします。

中国安徽省 黄山に夕日が差し込む風景

量詞

中国語で物の数を表現するときに量詞(日本語では助数詞と呼ばれています)を使います。

たとえば、

”我买了一铅笔。” (’私は一の鉛筆を買いました。/私は鉛筆を一本買いました。’)

中国語では”一铅笔”の”支”が量詞で、日本語の方は’一の鉛筆’の’本’が助数詞です。

形としては、中国語が「数詞+量詞+名詞」で、日本語は「数詞+助数詞+’の’+名詞」となります。中国語の量詞と名詞の間に日本語の’の’に相当する”的”はいりません。

このような中国語の量詞は主なものとして”个”、”件”、”把”、”本”、”张”など、日本語の助数詞は’杯’、’枚’、’個’、’本’、’冊’などがあります。日本語の助数詞が約500種類あると言われていますので、中国語の量詞も同じ程度はあると思われます。

量詞(助数詞)はその国の文化、歴史、物の見方・考え方に関わりがあると言われており、それぞれで興味深い使われ方になっています。

また量詞(助数詞)は中国、日本、ベトナム、タイなど東アジアで広く使われていて、欧米の言語などには存在しないとのことです。たとえば英語では、I bought a pen. 、You bought two pens.のようにa penやtwo pensの間には量詞(助数詞)はありません。

それではまず、日本語と同じ漢字を使った中国語の量詞の例でその適用範囲が日本語の助数詞と一部同じであるものを五つご紹介します。

①”杯”(’杯’)

中国語の”杯”は、容器に入った水、お酒、お茶、ジュースなどの飲み物を数える時に使います。

”我喝了一茶’’(’私はお茶を一杯飲んだ。’)

一方日本語の’杯’は、上記の中国語と同じ用法で使われるほか、

’砂糖を小さじ一杯加えます。’、’茶碗一杯のご飯を食べた。’、’バケツ一杯の芋を収穫した。’

など、飲み物以外にも広く使えます。なお、ご存知のようにイカも’杯’で数えます。

このように中国語の”杯”(’杯’)については、適用範囲が日本語よりも狭いです。

②”枚”(’枚’)

中国語の”枚”は、形が小さなものを数えるのに使い、比較的適用範囲は広いです。

たとえば、コイン、バッジ、釘、切手、ロケット、ミサイルなどを数える場合です。たとえば、

”如果收到了票的话请确认内容和数。”(’券を受け取りましたら内容と枚数をご確認ください。’)

ただし、この”枚”は上の例のように主に書き言葉に使い、改まった表現になります。口語では別の量詞が使われます。

一方日本語の’枚’は、コイン、切手、タオル、毛布、シーツ、シャツ、紙、板、皿、田畑など形が平たいものを中心に比較的広い範囲で使えます。

結局、コインや切手などの「小さくて平たいもの」についてはどちらも同じように使えるようです。その他の適用範囲についてはそれぞれ別の量詞(助数詞)が使われます。

③”匹”(’匹’)

中国語の”匹”は、馬、ラバ、ロバ、ラクダや、巻いた布の数を数えるのに使われます。一方日本語の’匹’は、広く動物、昆虫などを数えるのに使われています。また明治時代までは馬なども’頭’に取って換わられる前まで’匹’が使われていました。

また布を数えるには日本でも’匹’が使われているようです。巻かれている布は’匹(むら)’、布の単位は’匹(ひき)’ということだそうです。

このように中国語の”匹”は、日本語の’匹’ほど適用範囲が広くはないですが、一部同じように使われています。

④”位”(’位’)

中国語の”位”は、敬意をこめて人を数えるときや順位、くらいを表すときなどに使われます。

一方日本語の’位’は、複数人に対して敬意を込めて言うときや順位、くらいを表すときなどに使われます。

双方で適用範囲がほぼ同じように見えますが実は違いがあります。「敬意を込めて人を数える/言う」というところに違いがあります。

日本語の場合は、メールや通知の最初によく記述する’各位’という言い方しか残っていません。中国語ではもっと広く使われます。たとえばレストラン入り口での会話では、

従業員:”欢迎光临,你们几?”(’いらっしゃいませ、何名様ですか?’)

お客様:”三。”(’三名です。’)

などのようにお客様の人数を”三位”(’3人’)、”五位”(’5人’)などと数えます。このような場合には日本語では’3名様’、’5名様’となります。

⑤”个”(’個’)

中国語の”个”は簡体字で元の繁体字は”個、箇”です。

中国語の”个”はかなり適用範囲が広く、専用の量詞がない場合や分からない場合はとりあえずこれを使えば何とかなるとさえ言われています。たとえば、

”一个人”(’一人’)、”一个朋友”(’一人の友人’)、”一个国家”(’一つの国家’)、”一个苹果”(’1個のりんご’)、”一个学校”(’一つの学校’)、”一个条件”(’一つの条件’)、”一个问题”(’一つの問題’)、”一个箱子”(’1個の箱’)、”一个少时”(’1時間’)などです。

一方日本語の’個’は比較的小さめの塊の物を数えるのに使えるようです。これはかなり適用範囲は広いが中国語の”个”ほどは広くはないようです。たとえば、’1個の国家’、’1個の学校’、’1個の問題’などは無理があると思います。

因みに日本語の和語の’つ’は’個’に比べてさらに範囲が広がります。’一つのりんご’、’一つの星座’、’一つの願い’などと使えます。

結局、中国語の”个”と日本語の’個’はどちらともかなり適用範囲が広く、また使い方が共通する部分も多いと考えられます。

   

以上、同じ漢字で、かつ共通部分がある中国語の量詞と日本語の助数詞の例を五つ見てきました。

次は私が中国語の量詞と日本語の助数詞で最も不思議だと感じた例についてご紹介します。

”本”(’本’)

中国語の量詞”本”は書物や雑誌を数えるのに使われます。また映画のフィルムの巻数を数えるのにも使われます。たとえば、

“我每天看一书。”(’私は毎日1冊の本を読みます。’)

などです。ここで”书”は日本語で’本’のことです。中国語の量詞”本”に相当する日本語の助数詞は’冊’になります。

一方日本語の助数詞の’本’は、細長いもの全般に幅広く使われ、たとえば、

’一本の針’、’一本のペン’、’一本のビン’、’一本のひも’、’一本の木’、’一本の手’、’一本(の)道’、’一本の直線’、’一本の映画’、’一本の川’

などです。もちろん中国語の量詞”本”のように本・書物を数えるときにはまったく使えません。

X ’私は毎日1の本を読みます。’

ちなみに、次のように中国語で映画を数えるときは”部”を使います。

”看一电影。”(’映画を一本観る。’)

このように中国語の量詞”本”と日本語の’本’は、文字としては同じ漢字・意味を持ちながら、量詞(助数詞)としてはお互い適用範囲にまったく共通するところがありません。

上で見てきた①~⑤の例では、中国語と日本語の文字が同じであればどこか一部分でも適用範囲に共通した部分がありましたので、この”本”(’本’)に関してはとても不思議です。

しかも本というのは人の生活にとって重要な役割をしているものなのでより一層理解しにくいです。

その昔中国から日本へ伝わってくるときに何か起こったのでしょうか?

量詞を付加して作られた言葉

皆さんご存知のように日本語に’人口’や’車両’という言葉があります。

これらの言葉は、私は小学校低学年で始めて学習したと記憶していますが、「少し変な言葉だ!」と思いました。たとえば’人口’では、「人の口がなぜ人の総数を表すのか?」などです。

実は、中国語には元来名詞とその量詞を組み合わせて作る、総称を表す集合名詞というものがあります。’人口’もそこから来ています。

中国語では”口”は家族や村などの人数を数えるのに使われる量詞です。たとえば、

”我家有四人。”(’私の家は四人家族です。’)

と使われます。

そこで”人”と”口”を組み合わせて”人口”(’人口’)として、人の総数(総量)を表しています。

’車両’も同じような仕組みです。たとえば、

”买一辆车。”(’車を一台買う。’)

などのように”辆”(’両’)は”车”(’車’)の量詞です。

中国にはその他、”书本”(’書物’)、”纸张”(’紙類’)、”花朵”(’花の総称’)などがあります。日本に伝わって日本で使われているものは先ほどの’人口’と’車両’くらいでしょうか。

本・書物

先ほど”本”(’本’)のところで次のような例を挙げました。

“我每天看一书。”(’私は毎日1冊の本を読みます。’)

ここの”书”(’書’)は中国で本・書物の意味で一般的に使われる名詞です。

ところが日本では’本’が一般的です。どうしてこのような重要な名詞に変化が出たのでしょうか?

上でご紹介した本の総称名詞である”书本”(’書物’)が日本へ伝わってそれが簡略化され”书”がとれて”本”(’本’)だけになったのでしょうか。

または”一书”のように”本”が量詞として常に”书”と一緒に使われていたので、間違って量詞であった”本”のほうが書物を意味するものとして定着してしまったからなのでしょうか?

中国語は面白い!

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