デジタル絵画(パソコン絵画)ー長所と短所

絵を描く

ほとんどの人が小学校、中学校、高校などで授業で少なくとも一度は絵画を学んだ経験があるのではないでしょうか。デッサンから始まって、石膏像、人物像、果物などの静物、風景画などと学習したと思います。ほとんどが取っ付きやすい水彩画や木版画だったのではないでしょうか。

特に風景画の課題が出たときは、学校の外に出て、景色が良い場所を選んで腰掛け、たっぷりと時間をかけてお絵かきを楽しんだものです。

学校教育ではお絵かきを通じて、感性や美的感覚を磨いたり、空間認識能力や色彩感覚の発達、また右脳の発育を促したりすることを目的としていたのでしょうか。

学校時代に絵を描く才能に初めて気がついたり、また絵を描くことに特に喜びを感じたりしたごく一部の人が、職業として美術関連の仕事に就いたり、休日や定年退職後に趣味で絵を描いたりするようになるようです。

残念ながら多くの人々は、学校を卒業して就職するとそれから一生絵を描く機会がほとんどなくなってしまうようです。

この理由としては、そもそも絵に関心がない、関心があるが絵画を鑑賞するだけで満足する、他用で忙しくて時間が取れないなど色々とあると思いますが、単に準備・後片付けが面倒だという人もいると思います。

デジタル絵画という選択

準備・後片付けが面倒だという人には、デジタル絵画はうってつけだと思います。

”画材”として必要なのはPCやタブレット、電子ペンのみで、電源オンで準備完了、電源オフで後片付け終了となります。さらにアトリエや絵画を保存するための空調の利いた倉庫などもまったく不要です。

デジタル絵画はイラスト・漫画・アニメ用とアート用に大きく2つに分かれると思います。現在はイラスト・漫画・アニメ製作はほとんどPCやタブレットを使ったデジタル作業になっているようです。

一方アート用のデジタル絵画はさらに大きく3種類に分かれるように思います。

  1. 線、面、立体、影、色彩などを全部または一部自動生成し、自動あるいは手動で組み合わせて、色や形などを調整して制作するアート作品
  2. 写真データなどをあらかじめPCに読み込み、それをもとに自動または手動で色彩やタッチなどを調整し製作する作品(例:写真から自動で油絵風に変換して作る作品)
  3. タブレット画面をキャンバスに、電子ペンを絵筆に見立ててゼロから人手で描いていって作成する作品

私が今興味を持って実践しているのは③の方法です。最大の理由は、従来のキャンバスと絵筆を使った絵画作成の手の動きや環境と仮想的にかなり類似しているからです。このブログではこれ以降、③の方法を前提にして話を進めていきたいと思います。

デジタル絵画のメリット

まずデジタル絵画の長所をまとめておきます。

  1. 絵を描く準備がとても簡単である。単にパソコンの電源を入れペイントソフトを起動するだけでよい。また後片付けも単に電源を切ればよい。
  2. そもそも失敗することがない。好きなときに好きなだけ消して描き直すことがとても簡単にできる。
  3. 油絵風、水彩画風、パステル風、墨絵風など色々なタイプの絵を手軽に描き分けることができる。
  4. 近景、中距離景、遠景を別々に独立して描き、その後全部を合成して一枚の絵を完成させるというような柔軟な描き方が簡単にできる。
  5. 部屋、衣服、手を汚したりしない。また絵の具などの臭いもない。
  6. 絵を描くたびに絵の具やキャンバスを消耗することがない。
  7. 描いた絵を保管するのに広い部屋が必要になることはない。パソコンのディスクに膨大な数の作品を保管できる。
  8. 絵を描く途中で絵の具が乾くのを待つ必要がないので自分の好きなテンポで絵が描ける。
  9. 絵の色が次第にくすんでくるなどの経年変化がまったくない。

これらの長所で私がとても気に入っているのは、準備・後片付けが簡単、失敗がない、自分のテンポで描けるなどです。これはうれしいことに絵を描く行為がストレスフリー(ストレスがかからない状態)になることを意味しています。

デジタル絵画のデメリット

もちろんデジタル絵画だからこその欠点もあります。

  1. デジタル絵画はあくまでも二次元表現なので、従来の油絵のように絵の具を盛ったりするような手法が使えないということや絵筆のタッチの表現が困難である。
  2. デジタル絵画をそのままPCなどの画面上で鑑賞する場合、鑑賞者が使う表示装置の特性や設定の違いにより必ずしも作者が意図するとおりの色合いで表示されるとは限らない。
  3. デジタル絵画を印刷する場合、印刷機やインクの性質によって色合いや色彩をうまく調整するのが容易ではない場合がある。
  4. デジタル絵画は極めて簡単に複製を作成できるので著作権の保護の方法が課題である。
  5. 絵の展覧会の募集にデジタル絵画を受け付けているケースは多くはない。

ただ、上のメリットに比べればこれらのデメリットは十分許容できる範囲だと考えます。

最後に

人はなぜ絵を描くのでしょうか?

大昔の人は、見たものをイメージとして人に伝えるために描いたと言われます。また中世の頃は特に欧州では宗教画が好んで描かれて色々な場所に飾られていたようです。

現在では、絵画は自己表現の一つの有力な手段であるとよく言われます。

展示会に出したり、多くの人に見てもらったりするよりも、まず絵を描く作業の過程自体が自分にとって非常に贅沢な時間だと思います。

このように考えると、絵を描くのが上手いか下手かに関わらず、思い立ったときに気軽に絵を描くことが楽しめる生活はすばらしいと思います。

デジタル絵画は、時間的にも経済的にも多少ゆとりがあるが、面倒なことは遠慮したいと思われているシニアの方々の趣味として相応しいと思われます。

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