団体ツアーあるある(7)ー 写真撮影

はじめに

国内・海外旅行が趣味で数十年ほど前から色々な団体ツアーや個人ツアーを楽しんでいます。団体ツアーに参加すると旅行そのものの体験と同時に団体ツアーならではの面白くて興味深いことがらに色々と遭遇することになります。

この記事ではこれらの興味深い実際の体験を「団体ツアーあるある」としてご紹介していきます。

10.写真撮影

旅行では個人ツアー、団体ツアーを問わず旅行中に美しい風景や珍しいものを撮影したり、自分や夫婦、友達との記念撮影をするのは思い出に残りとても楽しいものです。

特に写真マニアの人にはご自慢のカメラを持参して思う存分に好きなものを撮影するとても良い機会になります。

個人旅行の場合にはもちろん好きな時に好きなものをじっくりと構図や露光などを選んでゆっくりと撮影に没頭できます。しかし団体ツアーの場合にはなかなかの困難が待っています。

写真をそれなりに撮れるのはガイドさんが「さあ、皆さんお写真をお取りください」と言ってくれた時や「風景と一緒に撮りましょうか」と言ってくれた時に限ります。

このようにガイドさんが言葉をかけてくれるのはごく限られた有名な撮影ポイントの場所だけになります。その他の場所では立ち止まって写真を撮ろうとするといろいろと面倒なことになります。

観光中に写真を撮ろうと立ち止まると他の皆さんはどんどんと先へ行ってしまうのでいつもあわてて後から追いかけるはめになります。また落ち着いて写真を取ることはできません。

また、比較的細い遊歩道(世界遺産の観光地ではよく見かけます)を皆で歩いているときは急に立ち止まるとあとから歩いてくる参加者の人たちの通行の邪魔になります。

さらに風光明媚な写真スポットでは写真を撮ろうとする参加者の人で混雑するのでなかなかよい位置、アングルで撮影はできません。

私の場合は観光地、ガイドさん、参加者の様子に応じてやり方を変えながら次のような色々な方法で何とかたくさん写真を撮ることにしています。

1.常にグループの最後尾を歩き、好きな場所で止まって撮影する。その後速やかにグループに追いつく

2.常にグループのはるか先頭を歩く。好きな場所で止まって撮影しますが、グループが私に追いつくまで時間的猶予がある

3.ガイドさんに許可をもらって一時離団する

クロアチアのプリトヴィツェ湖群国立公園を観光した時は上の2の方法でゆっくりとたくさんの写真を撮ることができました。

グループの到着を待っているときはできるだけ次の撮影の時間を稼ぐために、グループが遠くに見えたら直ちにその場所を一人で出発するようにしました。

ただし分かれ道に出くわした場合どの道を行くかが分かりませんのでその分岐点でグループが来るのを待ちます。

遠くにグループが見えたタイミングで先頭を歩いている現地ガイドさんにジェスチャーでどの道へ行くかを聞きます。ガイドさんは遠くからまた行く道の方向をジェスチャーで示して答えてくれます。そのタイミングですぐにそこを一人で出発します。

このような方法を何度か繰り返しながら、遊歩道の全行程をこなし、無事たくさんの写真をゆっくりと落ち着いて撮ることができました。このような方法はもちろん現地ガイドさんが協力してもらえるような親切な人である場合にかぎります。

3の方法の事例1

3の方法は中国の黄山へ観光に行ったときに現地ガイドさんに特別にお願いして実現した方法です。

中国・安徽省にある黄山は古くより「黄山を見ずして、山を見たというなかれ」と言われてきたほどの中国有数の美しい山です。黄山の奇岩・怪石、奇松、雲海を「黄山三奇」と言ったり、これらにさらに温泉と冬雪を加えて「黄山の五絶」と称され、広く人々に親しまれてきました。

このようなどこを切り取っても絶景が溢れる素晴らしい場所でしたので団体ツアーのグループと一緒に回ってもなかなかよい写真は撮れないだろうと最初から分かっていました。

午前中は現地ガイドさん、グループと一緒に有名なポイントを巡りました。レストランで昼食をいただいた後広い場所に集まり、そこでガイドさんが皆に午後の選択を与えてくれました。

「午後さらに黄山の奥の少し険しい遊歩道を歩きたい人は左側に寄ってください。午前の山歩きの観光で疲れたと思いますが、午後はカフェでゆっくりお茶を飲んだり近場を軽く散歩したりしたい人は右側へ寄ってください」

皆が2グループに分かれた後、私はガイドさんに近寄って「午後は一人で好きなように遊歩道を歩き回り写真をたくさん撮りたいと伝えました」

するとガイドさんは自分の携帯電話を取り出して私の携帯電話との通話の接続を確認し一時的な離団を許可してくれました。

その後私はグループと別れて一人で黄山の山の中の遊歩道を自由に歩き回り好きな場所で好きなだけ時間を気にせずに写真を撮りました。こうすることで全く個人旅行で来たのと同じように行動できました。

ひとりで黄山を歩き回っていると観光に来ていた中国人のひとによく声をかけられます。多くはカメラのシャッターを押して欲しいということですが、気軽に中国語で何か話しかけてくる人もいました。

皆と別れたのが午後1時くらいで次にグループに合流したのが夕方7時頃でしたので何と約6時間も自由行動ができたことになります。お陰様で良い写真をたくさん撮ることができました。

3の方法の事例2

実は3の方法は別の中国ツアーで桂林の近くの龍勝棚田に観光に行った時にも経験したことがあります。

龍勝棚田は、桂林の北西約90kmのところにある龍脊山を中心とした山岳地帯に開拓され、「世界の棚田の冠」と称えられています。海抜約300~1100メートル、約30度の急勾配の山肌に約60キロメートルにわたり美しい棚田景区が広がっています。

棚田の麓の駐車場でバスを降りた後、現地ガイドさんに連れられてグループで棚田の遊歩道を展望台へ向けて登り始めました。すぐの所に人を運ぶ駕籠(かご)屋さんが待機していましたが、グループの中の2名がその駕籠に乗って山を登るということになりました。

その駕籠かきはグループよりかなり早い速度で登っていき、先に行って休憩地点で皆を待つということになりました。

私はその駕籠かきについていきグループよりかなり先までいきました。休憩地点で駕籠かきは駕籠を置いて休憩を始めましたが、皆が到着するにはまだかなり時間がかかりそうでした。私は先に展望台に行ってゆっくりと写真を撮ろうと駕籠かきに道を聞いてそのまま一人でどんどん登っていきました。

途中で分かれ道が何度かありましたが遠くの山の上に中国国旗が掲げられた展望台が見え隠れしていましたのでとにかくそこを目指して山を登って行きました。

途中でアメリカ人のご婦人とお子さん2名に出くわしましたが、彼らも展望台を目指しているとのことで世間話をしながら少し一緒に歩いて行きました。

途中でも素晴らしい棚田の写真がたくさん撮れました。展望台についてからも360度見渡す広大な棚田の風景を好きなだけ撮影することができました。

そうこうしているうちに私たちのツアーグループの一群が登って来るだろうと思っていましたが、なかなか登ってきませんでした。私は携帯電話を取り出して現地ガイドさんに電話をすると「今展望台に皆さん到着しました」と言われました。

そこで辺りを見回してもグループの姿は見当たりません、そこでガイドさんに再度確認すると私がいる展望台とはまた別の展望台があってそこに皆さんがいるとのことでした。ガイドさんの説明に従って遠くを見渡すと谷を越えたかなり向こう側に見える山の上にもう一カ所中国国旗がたなびく展望台を発見しました。

どうも棚田には何か所かの展望台があるとのことです。この後は山の中腹にある近くの村の古いレストランで名物の龍勝竹筒飯の昼食だということでしたのでそこでグループの皆さんと落ち合うことにしました。

私がそのレストランに到着した時はまだグループの全員が到着していなかったので、皆が揃うまで少し待つことになり、結局私が一時離団していたことは面白いことにガイドさん以外誰も気が付いていませんでした。

この日はたまたま私が間違えて別の展望台に行ってしまったということで結果として一時離団の状態になり、おかげで棚田の美しい写真をゆっくりとたくさん撮ることができました。

私が登った展望台は普通団体ツアーでは行かないような穴場のようで、途中野菜を運んでいる農家の人と出会ったり、道がとても細くなったり、人家の間を抜ける道では野良犬や鶏が気ままに歩き回っていたりと地元のとてものどかな光景も同時に楽しむことができました。

これはこれでまた記憶に残る面白い旅の経験になりました。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする