人はなぜ旅をするのか

はじめに

「人はなぜ旅をするのか」という問いかけやその答えを求めた例は山ほどあります。関連書籍も過去からたくさん出ているし、ネット上でもブログやSNSなどで常に盛んにコメントが飛び交っています。

学問の世界でも観光学というものがあって、その中の特に観光心理学でも重要な研究テーマになっているそうです。この答えが分かれば観光業の発展に多大な寄与ができるからだといいます。

旅が好きだという人は周りにもたくさんいます。私自身も幼少の頃より旅が大好きで国内・海外を問わず訪れたい場所はいまだにたくさんあります。

日本人がどの程度旅行を楽しんでいるかのデータは、日本生産性本部が毎年発表する「レジャー白書」で知ることができます。下記は2017年8月発表のデータ「余暇活動の参加人口上位20種目」です。

2017年は国内観光旅行が1位でしたがこれは7年連続の1位だそうです。

これを見ても分かるとおり旅が好きで実際に旅をしている人は国民の相当数に上っています。

また色々な調査では、シニアの余暇の過ごし方で以前から毎年変わらず最も人気があるのもやはり国内・海外旅行でその他の活動を大きく引き離しています。

下の図は2018年11月に株式会社大和ネクスト銀行が実施した全国の50歳~79歳の男女のシニアへの「楽しんだこと」アンケート集計結果です。

シニアになれば若い頃に比べ時間的にも経済的にも余裕が出てきます。時間もお金もかかる旅行はまさにうってつけでしょう。

またいつの時期でも自由に選べるシニアの旅行では、行きたい国や観光地の天候などが最も良くなる「ベストシーズン」を狙って行くことができます。これは旅好きにとっては最高の贅沢だと思います。

これだけ多くの人を魅了してやまない旅ですが、その好かれる理由や背景を考えて見るのも面白いと思います。

旅という言葉

まず「旅」という言葉について考えたいと思います。ある意見によると「現在の居住地から離れて一時的に別の場所に行きまたもとの居住地に帰る行為」だと定義されているようです。

しかし片道だけの移動(最終的に目的地などに定住する移住)でも旅と呼んでも良いのではないかと思います。たとえば「困難に満ちた長い旅路の末にようやく新天地にたどり着いた」などとよく表現されているからです。

「旅」と「旅行」の区別ですが、辞書にもあるように意味的には同じだと思います。ただしそれぞれの言葉がもつニュアンスやイメージはかなり異なります。

「旅行」は十分計画され、旅程がきちんと管理された移動で、どちらかといえば事務的なイメージが強くなります。旅行の行程よりはむしろ目的地とそこで何をするかに重点が置かれているような感じがします。

一方「旅」の方は、目的地や旅程、さらにその目的さえももっと緩やかであいまいな活動のようなイメージがあります。「風の向くまま気の向くままの旅がらす」、「ひとり旅」、「自分再発見の旅」、「旅は道連れ世は情け」など「旅」を「旅行」に置き換えるとしっくりきません。

「観光」はまた違った意味の言葉で、「ある地域で優れたもの、素晴らしいものなどを見る」ということだと思います。旅をして各地で観光することを「観光旅行」と呼んでいるのでしょう。

旅の分類

色々な分類の仕方があると思いますがここでは目的別に次の4つに分類して見たいと思います。

1.明確なミッションをもつ旅

2.いわゆる観光旅行

3.息抜き・リセット・自分再発見・将来の方向付けの旅

4.目的地に長く滞在し生活する旅

これらそれぞれを見ていきたいと思います。

1.明確なミッションをもつ旅

大昔から人は特別なミッションをもって旅をしてきました。アフリカで始まったといわれている人類の先祖たちがより住みやすい新天地を求めて世界中に広がっていきそれぞれの地域で独特の民族を形成していったことは良く知られた歴史的事実です。

大航海時代にはオランダ、スペイン、ポルトガル、イギリスなどから王や政府の命を受けた船乗りや冒険家たちが競って新大陸の発見、新航路の発見、金銀財宝の発見、香辛料や絹やコーヒーなどの産地の発見などのために命がけで世界中を旅していました。

キリスト教を世界中に広める布教活動のための宣教師の旅も有名です。仏教も布教のために昔から僧が旅してきました。

一般の人も宗教的な理由で巡礼などの旅をしてきました。日本でも江戸時代などに伊勢神宮参拝や富士登山の旅、また四国八十八箇所の巡礼の旅などをしてきました。これらは現代になっても人々によって繰り返されています。

近年になってからは、サラリーマンなどによって会社の命令で国内・海外出張が盛んに行われるようになりました。

また、研究・調査やスポーツ・芸術のための旅も昔から盛んに行われています。

全国を回ってお城や遺跡を調べる旅、アジアの珍しい昆虫を採取する旅、世界を回って絵のスケッチをしてくる旅、全国100名山を踏破する旅などがあります。

2.いわゆる観光旅行

近年の船舶、飛行機、自動車など交通手段の飛躍的発展や、世界の国々の近代化などにより、世界の多くの国へとても安全に気楽に旅行ができるようになりました。

またツーリズムの進展により旅行の費用も最近は格段に安くなってきました。たとえば日本では特に韓国、台湾など東アジア地域やハワイ・グアムなどには国内旅行とあまり変わらない費用で行けるようになりました。

そこで日本でも近年は国内旅行ばかりでなく海外旅行もとても一般的な旅行になってきました。海外旅行が極めて珍しかった時代には、羽田国際空港に家族・親戚が集まってお見送りに来たというエピソードもあるようです。

観光旅行の理由・目的を挙げると次のようなものが考えられます。

○絶景を見てみたい(さらに綺麗な写真を撮りたい、絵を描きたい、句を詠みたい)

○ショッピング(ブランドもの、現地オリジナルの工芸品、加工食品など)を楽しみたい

○美味しいグルメ、飲み物、果物を味わいたい

○異なる生活・文化・風俗・習慣・歴史・言語にふれてみたい

○世界遺産など古代遺跡、歴史的建造物、自然を見てみたい

○世界の人々とコミュニケーションしてみたい

○その土地ならではのスポーツを楽しみたい

○美術品、工芸品、伝統芸能を楽しみたい(さらに美術館、博物館巡り)

○パワースポットを訪れたい

○古民家、古城、あこがれのホテルに泊まってみたい

○その土地ならではの動物・植物を見てみたい

○お祭りや、伝統行事を見たり参加したりしてみたい

○温泉にゆったりと入りたい

○素敵な街の町歩き、雰囲気、気候を楽しみたい

○映画やドラマの舞台になった場所を尋ねたい

○歴史の舞台となった場所を尋ねたい

○離れて暮らす家族、親戚や友人を訪ねたい

○その土地ならではのウォーキング、トレッキングを楽しみたい

○漠然と非日常を味わいたい

最近ではこのような人々の観光旅行の理由・目的の多様化に合わせて、観光会社もバラエティ豊かな多くのツアーを提供しています。たとえば、日本の城を踏破する旅、オーロラ鑑賞の旅、南極の旅、トレッキングの旅、写真撮影の旅、スケッチの旅、グルメ堪能の旅などです。

ところで観光旅行ではパッケージツアーに参加するかまたは個人で計画して手配する個人旅行にするかの選択がありますが皆さんはどちらが好きですか。

個人旅行では計画・実施すべてが自分たちの思い通りにできるので極めて満足度の高い充実した旅行ができますが、やはり総費用は高くなってしまいます。

パッケージツアーは決められた通りの窮屈な行動が求められますが、手配や予約・再確認などとにかく手間がかからないということとやはり総費用がかなり安くなります。

旅行は昔から計画、実行、事後(土産話、写真の整理など)の3回楽しめるといわれてきましたが、この3回しっかりと楽しむにはやはり個人旅行がベストですね。

また近年はネット上に旅行に関する情報や口コミが溢れており、特に個人旅行の計画の際に大いに役立ってくれます。さらにGoogleのストリートビューを見れば世界中の道路、街並みがチェックできてまるで現地に下見にいくようなことが可能になっています。

自分の幼少の頃に比べて、数十年の間に観光旅行がこんなにも手軽になるとは思ってもいませんでした。

3.息抜き・リセット・自分再発見・将来の方向付けの旅

ストレスが溜まったなと感じたり、最近ミスが多いと感じたり、また対人関係などの問題で悩んだりと気分が落ち込んだときに、息抜き・気持ちのリセットのためにふと思い立ってリゾート地などに旅に出る場合があります。

この場合は一人旅でせいぜい数日程度の短い旅になることが多いと思います。また行き先も海、湖、川、山など心を落ち着かせることができる静かな環境が好まれます。とにかく現実から一時的に避難できる場所が必要です。

旅先では何をするでもなく例えば美しくて静かな海を見ながらぼーとして一日を過ごすようなことが多いと思います。

また今の仕事・人生になにか疑問をもったり、将来に漠然とした不安を持ったりしたときには、自分再発見・将来の展望を探るための旅にでることもあります。

この場合にはいわゆるバックパッカーのような感じで、むしろ東南アジアのような賑やかで混沌とした色々珍しい体験・発見ができるような場所が好まれるようです。もちろん世界一周もあると思います。

特に細かい旅程、日程は組まずに、目的地や経由地もあらかじめ決めずに出かけることも多いようです。

旅の長さはやはり少し長めになるようで数ヶ月から数年に及びます。この旅の結果、自分が納得する何かを見つけて今後の人生に役立てることができれば幸せだと思います。

4.目的地に長く滞在し生活する旅

最近特にシニア層に人気なのが定年退職後に国内や海外の別の場所に移住したり、長く滞在して生活するロングステイという形の旅があります。ここでは特に海外でのロングステイについて見ていきたいと思います。

財団法人ロングステイ財団によると2018年時点での海外ロングステイ希望国は、1位 マレーシア、2位 タイ、3位 ハワイ、4位 フィリピン、5位 オーストラリア、6位 台湾、7位 カナダ、8位 インドネシア、9位 シンガポール、10位 アメリカ本土の順でした。

特に1位 マレーシアはなんと13年連続1位だということです。

若い頃に仕事や観光で訪れた場所が気に入り定年後そこを再び訪れてロングステイを楽しむようになったという人も多いようです。

ロングステイの滞在では1~2週間から数ヶ月~数年の広い範囲で行われているようです。国によって日本人の受け入れ態勢やシステムが整っているかどうか、生活費はどのくらいか、日本語が通じる病院やお店が十分かどうか、すでに滞在している日本人グループとの交流状況はどうかなど色々な条件によって滞在期間も違ってくるようです。

旅好きの人にはたとえばアジアの国々での滞在がお勧めのようです。たとえばマレーシアですとそこの長期滞在生活を楽しみながら、マレーシアを基点にさらに近隣のアジア諸国やオセアニア諸国へかなり安い費用で旅行にいけるからです。

私もロングステイには関心があり、気候が良い春と秋は日本で生活し、梅雨時から夏の間と冬の間は、ハワイ、台湾、ニュージーランド、カナダなど生活しやすい環境で過ごすというのが理想的だと考えています。

人はなぜ旅をするのか

上で書いてきたように旅の理由・目的は極めて多岐にわたることが分かります。いわゆる十人十色で人それぞれだということです。

私の場合は優先度順に挙げると次のとおりです。

1.自然の絶景が見たい

2.異なる生活・文化・風俗・習慣・歴史・言語にふれてみたい

3.素晴らしい美術品、工芸品、建造物を見てみたい

4.世界の人々とコミュニケーションしてみたい

5.非日常を味わいたい

ところで、人によっては、なぜ旅をするのかという問いに上に挙げたような明確な答えを返せずに、「ただ何となく旅が好き」、「特に理由はないがとにかく旅が好き」という人もいるようです。

そこでもっと深いところにある理由について少し考えてみたいと思います。

太古の昔からこの人類が地球上に生き残ってさらに発展を遂げることができている大きな理由として「身体的強さ」ではなく「環境への適応能力の高さ」、「柔軟性」が挙げられています。

環境への適応能力には「好奇心が旺盛で好奇心を満たしたいという欲求が強い」ことが重要です。さらに「美しいもの、良いもの、心地よいものを求める欲求が強い」これを言い換えれば「五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を喜ばせるものを追求する欲求が強い」ことも大切だと思います。

またストレスを感じるときにそれをうまく回避するストレス・コントロールができるよう行動するという欲求も重要でしょう。

「旅」という活動は、たまたまこのような人の深いところにある各種の重要な欲求を同時にある程度満たしてくれる素晴らしい活動になっているのではないでしょうか。

そうであれば「旅」が人種、性別、年齢を問わず時代を超えて世界中の多くの人々を魅了してやまない理由が分かったように思えます。

旅で出会った旅好きの人のエピソード

ここで私が旅としているときに出会った旅好きの人たちのちょっとしたエピソードを紹介しておきたいと思います。

いわゆるリピーター

旅のリピーターというと「ハワイへもう30~40回行きました」、「台湾へ50回ほど通っています」などよく聞きますが、私が出会ったのは「中国(台湾ではなく大陸)へ25回行きました」という中年のご婦人でした。

中国は日本人にはあまり人気がなく、トイレ事情が悪いことや食べ物に要注意、PM2.5の大気汚染、マナーが良いとはいえないなどマイナスのイメージが強いので特に女性の中には敬遠する人が多いと聞いています。

そのような事情にも係わらず女性で25回というのは驚きでした。理由を伺っても特にこれといったものはないというご返事で漠然と中国への旅行が好きだということでした。

実は私も今日の時点で中国には12回旅をしています。理由は明快で、

1.中国にたくさんある自然の絶景を堪能したい

2.中国語に興味があり現地の人とコミュニケーションしてみたい

3.日本に文化・風俗習慣などが伝わってきた元の場所に興味がある

4.飛行機のフライト時間が短く、時差も1時間なので無視できる

5.ツアーが意外にもたくさん出ていてしかも費用も安い

などです。中国料理もまずくて食べられなかったことは一度もなく、逆に常にとても美味しくいただいています。

上で述べたマイナス面はもちろんありますがそれを上回る魅力がありリピートしているということです。

余談ですが私が考える中国の4大自然絶景を挙げておきます。一生に一度は訪れたいところです。こんなにも日本に近いところにこのような絶景があるとはまったくの驚きです。ちなみにそれぞれの旅行記はそれぞれのリンク先(このブログ内)にあります。

1.桂林

2.黄山

3.九寨溝・黄龍

4.武陵源

なお旅のリピーターについては次のような話をテレビで聞いたことがあります。

あるご夫婦が世界の色々な国々を旅行したいと思いたち、まず最初にスイスに旅行に行ったそうです。ところがスイスにあまりにも感動してその後、他の国には行かずにスイス旅行のリピーターになってしまったそうです。

旅の理由や目的も人それぞれですが、どこの場所へのリピーターになってしまうかもやはり人それぞれだと思いました。

旅の詳細な記録を残す人

最近ですが、ご夫婦で頻繁に海外旅行をされていて、毎度旅行の様子を細かくビデオで撮影している方々に出会いました。もちろんレストランでの料理も毎回ちゃんと撮影しています。

そのビデオをどうするのか伺ったら、ネットで公開するわけでもなく、旅行の後ちゃんと編集して家庭に保管しておき、折にふれて家族で過去のビデオを見て楽しむのだそうです。

旅は3回楽しめるとさきほど書きましたが、このご夫婦の場合は何回でも楽しめるということでしょうか。世の中ではよく人生の記録として色々な手段で記録を残す活動がありますが、これもその一つの方法になると思います。

私の場合は、写真と説明ですが旅行の様子をできるだけこのブログで書いて公開しています。これもどちらかというと自分たちのための備忘録に近いものだと考えています。

旅行時に撮った写真だけを整理して保存していてもよいのですが、ブログに書いて公開することにするとおのずと具体的な説明やそのときの気持ちをちゃんと記述しなければならず、これがかえって自分たちにとってもよりすぐれた備忘録になってしまうということです。

たとえば訪れた観光スポットについて、ちゃんと記述するために後で追加の調べ物をすることも多く、新たな素晴らしい発見をすることもあります。

高齢のシニア男性

中国にツアーで行ったときの話です。同じグループに1人で参加した80歳くらいの男性シニアの人がいました。

夕食時に10名くらいで中国式の大きな丸テーブルを囲んだときのことです。最初にそのシニアの方がテーブルの皆に向かって「皆さんはよく旅行に行かれますか」と問いかけ、しばらくは皆の旅行の話を静かに聴いていました。

しばらくして突然、リュックの中からA4版の紙を取り出しました。それは数枚ずつホッチキスで留められていましたが、それを9部、テーブルについていた9名に手渡していきました。

それから大きな声で「今お渡ししたのは私の過去の旅行の様子をまとめたものです」と言いました。見ると訪問した国名、都市の名前、観光スポットの名前、訪問時の様子などが小さな字で細かく書かれていました。

そしておもむろにその内容の説明を粛々と始めました。突然で少し強引な様子でしたので、みなさん少しあっけにとられた様子でしたが、その男性シニアの旅行談義を聞いていました。

その男性シニアは80歳くらいになろうかという高齢者でしたが、世界中色々な国々を旅行してきていて、旅行が大きな生き甲斐で、かつ元気の元だということがよく理解できました。

日本でよく見かける80歳くらいの男性シニアと比べて確かに比較にならないほどお元気なご様子でした。

旅行が好きでそれを実践している人はいつまでも積極的で、元気で若さを保たれるのかもしれません。

旅友(たびとも)

ある海外旅行ツアーに参加したときのお話です。夕食時にたまたまテーブルの隣に同じツアーに参加していた中高年のご夫婦らしき男女が1組座っていました。

旅行中この2人がいつも寄り添って観光している姿は何度か見かけていました。しばらくそのお二人はとても親しげに談笑していました。一息ついた頃に私が「ご夫婦でよく旅行されるのでしょうか」と初めて話しかけました。

すると男性の方が「私たちは夫婦ではなく旅友(たびとも)です」と答えました。聞けば旅友として何度も一緒に旅行へ行っているとのことでした。男姓と女性のコンビだったので私は思わず驚いてしまいました。

最近日本では色々な理由で「お一人様」が話題になっていますが、旅好き同士で息が合えばたとえ男女でも旅友として行動を共にするのもありだなと納得した次第です。

私も別の海外旅行ツアーのときに、同じツアーに参加していた仲の良い中年のご婦人2人に、次の海外旅行でもご一緒しませんかとお誘いを受けたことがあります。

その時このようにして「旅友」がはじまるのかなと思いましたが、よく話を聞くとやはり今後の希望の旅行先がかなり異なっていたのでその時は「旅友」になるのは遠慮しました。

上で書いたように、やはり旅の理由・目的は十人十色で当然ながら目的地も違ってくるので「旅友」になるのは容易ではないだろうと思いました。

最後に

消費行動の一つとしての旅を見ると、テレビや自動車など「もの」を買ったりするのとは違い、購入後に置き場所が必要になったり、メインテナンスが必要になったりはしません。

その理由は、旅を体験した後に残るのは「楽しい思い出」だけだということです。これはとても賢い消費行動だと思いませんか?

ところで最近はかなりの家庭に50~60インチを超える大型液晶テレビが普及し、旅番組が非常に綺麗な映像と共に楽しめるようになっています。あまりにも臨場感が伝わるために、私は近々訪れる観光地の絶景を紹介したテレビ番組は敢えて見ないようにしています。

あらかじめテレビで素晴らしい絶景を見てしまうと、現地に行ってこの目で見たときに確実に感動が薄れてしまいます。あたかもデジャブ現象のようになってしまいます。数年前に実際にこのような少し残念な経験をしたことがあります。

このことは逆に大型の美しい液晶テレビ(自然の色を忠実に再現できるもの)やさらにバーチャルリアリティを使いうまく臨場感を出し、さらに番組内容を工夫すれば、自宅に居ながらにして旅をした気分を味合うことができることになります。

これは病気や高齢のために旅が難しくなった方々にとってはとてもありがたいことだと思います。

先ほどこの記事の中で「旅行は昔から計画、実行、事後(土産話、写真の整理など)の3回楽しめる」と書きましたが、最近実は4回以上楽しめることが分かってきました。

旅行直後の土産話や写真整理だけでなく、たとえば数十年後に写真などを見て旅行を振り返り、楽しかった懐かしい思い出にいっとき浸ることができるということです。観光スポットは数十年の間に良くも悪しくも大きく様子が変わっていることが多く、その変化を楽しむのも一興です。

また数十年の間にその地域であらたな魅力的な観光スポットが開発されていたり、ホテルが美しく全面改装されていたりすることもあり、再びその国や地域を訪れたいと思うきっかけになります。

最近は、ホテル、航空機、パッケージツアーなど旅行関連商品が簡単に比較して選べるサイトが充実してきたり、民泊や配車サービスのウーバーなど旅行関連サービスの広がりなどでさらに旅が容易に便利になってきています。

また現地では持参したスマホで簡単に自分の居場所を地図上で確認できたり、目的地までのナビゲーション・サービスを受けることができて道に迷うこともほとんどなりました。

旅は色々な魅力に溢れた人気のアクティビティです。今後も時間にゆとりがあるシニアの方々を中心に旅はますます盛んになっていくものと思われます。

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