海外旅行回想録(14) ー ドイツ(前編)

はじめに

この記事のシリーズでは三十数年前に行った海外旅行を中心に特に思い出に残っている観光の回想録をご紹介しています。

この記事ではドイツ旅行(前編)の体験をご紹介したいと思います。

14. ドイツ(前編)

ドイツヘは今までに4回行きました。初めてドイツへ行ったときに早速感動したのは到着した空港からタクシーに乗ろうとしたら客待ちしているタクシーのほとんどがベンツだったことです。

日本では高級車になりますがドイツでは国産車としていわゆる大衆車扱いでしたので当然と言えば当然のことでしたが、このことでついにドイツを訪問することができたという実感が湧きました。

私は学生の頃第2外国語としてドイツ語を学んだので、実際にドイツに行き観光することで生のドイツ語に触れることができることをとても楽しみにしていました。

ドイツは国民性が日本と似ていてみなまじめで勤勉だと子供のころから教わってきました。実際に第一次世界大戦、第二次世界大戦の敗戦国で巨額の賠償金など経済・産業に多大な損害を被りながらも現在ではEU諸国のなかでもトップレベルの優等生になっています。

これに関連して興味深い話があります。第二次世界大戦後は連合国によりドイツは日本と同様に長い間航空機の開発・製造が一切禁止されました。そのためにドイツではエンジンを使わないグライダーの開発および生産がとても盛んになったとのことです。

2016年時点ではドイツはグライダーの生産機数及び保有機数で世界シェア1位でドイツ国内だけで5,000機以上のグライダーを保有する「グライダー王国」だそうです。

私も若いころ一時期グライダーに乗って操縦していたのでこのような話にはとても関心があります。グライダーによる飛行はエンジンが付いていないのでまさに風と一体になって大きな鳥のように大空を悠々と舞うという素晴らしいスポーツです。

ドイツはこのグライダーの開発によって機体の浮揚特性など航空機技術を磨き続け現在ではヨーロッパを代表する航空機であるエアバス製造の一役を担っています。一方日本は残念ながら長らく航空機技術が途絶えてしまっていたようです。

さてドイツには観光要素がたくさんあります。中世から続く美しい街並み、荘厳な教会、たくさんの素晴らしい古城、そしてグルメでは何といってもビールとソーセージ料理が世界的に有名です。個人的にはヨーロッパではデンマークと共に大好きな国の一つです。

シュトゥットガルト には駅前から1Kmに及ぶ歩行者優先道路であるKönigstraße(ケーニッヒ通り)がありますが、ここはデンマークのコペンハーゲンにあるストロイエ通りのように、ウインドウショッピングをしながらそぞろ歩きが楽しめるとても素敵な観光スポットになっています。この2つの歩行者天国はイメージがとても似ているのでときどき混同しそうになります。

この記事では当時オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、ドイツを鉄道で回った個人旅行の時に撮影した写真を中心にご紹介したいと思います。訪れた場所はケルン、ローテンブルク、ライン川、ハーナウ、ハイデルベルク、フュッセン、ミュンヘンなどです。

ケルン

鉄道を使った個人旅行ではルクセンブルクから鉄道でドイツへ入り、まずケルン駅で下車しました。ドイツ国内を数日かけて観光し最後はミュンヘンから飛行機で日本へ帰るという日程でした。

ケルンには世界的によく知られた有名な大聖堂があります。

     

上の写真は正面から(左)と側面から(右)撮影した荘厳な大聖堂の堂々たる姿です。最初に見上げた時はその巨大さと壁の繊細な装飾にとても感激しました。これは世界最大規模のゴシック建築のカトリックの大聖堂で高さおよそ157mの天を突く双塔に圧倒されます。建築には何と約630年を要したそうです。

私が個人的に好きな教会はバチカン市国のカトリック教会の総本山サン・ピエトロ大聖堂、フランスのパリのノートルダム大聖堂、そしてこのケルンの大聖堂です。

     

左上は内部にたくさんある美しいステンドグラスの一つです。それぞれキリストの生涯などが描かれていました。右上は床の模様です。タイルだと思われますが色々な絵が描かれていて見ていて飽きませんでした。

ケルンの街を散策していると中世の服装をした楽団に出会いました(上の写真)。何かイベントでもあるのでしょうか。

ウルムの大聖堂

ドイツではウルムの大聖堂も是非お勧めしたい観光スポットです。尖塔を含めて高さ約162メートルもあり教会建築として世界一の高さを誇っています。

私は別のドイツ旅行の時に鉄道でウルムを訪れました。

鉄道のウルム駅を降りてすぐに駅の建物ホール内にあったお店の人にウルム大聖堂への行き方を尋ねました。ウルムの街で迷子になりたくはなかったからです。

するとそのお店の人は怪訝な顔をして「駅の建物を出たら目の前にありますよ!」と教えてくれました。駅を一歩出るとまさに目の前に巨大な大聖堂が空高くそびえたっていました。あまりにも近すぎてそのような高い尖塔のある教会の足元のごく一部しか見えていなかったことに気が付きました。

やはりその高さに全く圧倒されてしまいました。見上げていると首が痛くなるほどでした。ガイドブックによると141メートル地点までは登ることができるということで早速階段で登ることにしました。

しかし段数が768段という常識外れの段数でしたし、塔を上がるにつれて螺旋階段はますます狭くなっていき、また後から上がってくる人に迷惑をかけないように気を使いながら登っていったのでとても息切れをしたことを覚えています。

最高地点からはウルムの美しい街並みが眺望できました。また768段を一気に登ったという達成感を十分に味わうことができました。

良い運動にもなりますし世界一の高さの教会ということで記念にもなりますので健康と体力に自信がある人には是非挑戦することをお勧めします。

ローテンブルク

ローテンブルクはドイツのロマンチック街道にある小さな街で中世ヨーロッパの雰囲気が残り、おとぎの国にでも来たかのように愛らしい街並みが特徴的です。日本人観光客にも大人気の場所です。

ロマンティック街道は、北はヴュルツブルクから、南はノイシュバンシュタイン城があるフュッセンまで南ドイツを南北に縦断する街道です。

下の写真は遠くの丘の上に広がるローテンブルクの街を眺望した風景です。緑の森に赤い屋根の家々が映えています。

    

左上の写真はローテンブルクの街へ入る城門で、ブルク公園の入り口にあるのでブルク門とも呼ばれています。真ん中の写真はある建物の横に作られた螺旋階段の塔です。なかなか珍しい作りですがローテンブルクではよく見かけました。

右上の写真は路地裏通りの様子です。可愛いお店やカフェが立ち並んでいて観光客で賑わっていました。

   

左上の写真は観光の中心地であるマルクト広場にあるローテンブルク市庁舎です。この建築物は正面がルネサンス様式、アーケードはバロック様式、塔のある部分はゴシック様式と3つの様式が混ざっているのが特徴的です。

右上の写真は市庁舎直ぐ横の建物で、壁の柱の木組みの模様がとても印象的です。まるでチョコレートで作ったかのような楽しい雰囲気になっています。

   

左上の写真は市庁舎横にある仕掛け時計です。大きな時計の両側の窓には人形が置かれていて時間が来ると窓が開き昔ローテンブルクを占拠した将軍とジョッキを手にした当時のヌッシュ市長が現れ、市長がワインを飲み干すという動きが見られます。ワインを飲み干すことで市長が街の危機を救ったという伝説にちなんでいるそうです。

右上の写真は建物の上の方に滑車が取り付けられている様子を撮影したものです。昔はこのような滑車を使って重たいものを外から上階に運び上げていたようです。

上の写真はローテンブルクでもっとも有名な観光スポットであるプレーンラインです。ローテンブルクの紹介としてよく使われる代表的な風景です。二股に別れた道の間に建てられた小さな木組みの家がとても可愛くて印象的です。

この家の左右の向こう側にある門はジーベル門とコボルツェル門です。周りにも絵本から飛び出したような可愛い家々が立ち並び、ローテンブルクに来た観光客が必ず立ち寄る場所だそうです。

   

左上の写真は街角の風景です。また右上の写真は丁寧に整えられた庭園の様子です。

   

左上は植木や塀のツタのグリーンでほとんど埋まってしまったお家の外観です。右上は一年中開いている世界的に有名なクリスマス専門店ケーテ・ウォルファルトの中の様子です。6~7mほどの高さの綺麗なクリスマスツリーが飾られていました。

お店の中には、クリスマスオーナメントやキャンドルスタンド、くるみ割人形などのたくさんの種類のクリスマス雑貨が揃っています。見て回るだけでもとても楽しめる店内でした。

上の写真は私たちが宿泊したホテルの外観です。すべての窓には綺麗に花が飾られていてとてもお洒落でした。

上の写真はもともとの建物(灰色部分)の上部に新たに別の建物(真白の部分)を追加増設した珍しい作りのお家です。

ローテンブルクの観光では時々小雨になりましたが絵本の中のような可愛い街並みをゆっくりと散策・観光することができました。

ドイツの観光街道

中世には自由都市や小さな国家の集合体であったドイツは各地方ごとに特色ある街並みを形成してきたようです。そのためかドイツには国を代表する大都市がないとも言われています。

確かに日本の東京、イタリアのローマ、フランスのパリ、イギリスのロンドン、オーストラリアのシドニーなどに相当する代表都市は思いつきません。

ドイツ政府観光局は観光促進にあたり都市そのものにスポットを当てるのでなく、類似の特徴を持つ街の連なりである観光街道に力を入れてきたようです。現在ドイツには約150もの観光街道があるそうです。

ドイツ政府観光局が日本事務所を1973年に開設した際、日本には特にロマンチック街道を大々的に紹介したそうです。そのネーミングも日本人に気に入られその後日本人観光客に大ヒットしたとのことです。

日本人に有名なもう一つの街道はメルヘン街道です。メルヘン街道は、北はブレーメンからカッセルを経て南はフランクフルト近郊のハーナウまでグリム兄弟ゆかりの地を結ぶ街道です。グリム童話も日本人にはとてもなじみが深くその影響でメルヘン街道も多くの人々が関心をもつことになったようです。

ライン川

ライン川は、スイスアルプスに源を発し、スイス、ドイツ、フランス、オランダを流れ北海に注ぐ全長1,320kmの川でドナウ川とともにヨーロッパを代表する国際河川の一つです。昔からドイツ人には「父なる川」と呼ばれ親しまれてきました。

かなり前からドイツ観光と言えば「ライン川下り」と言われていたほどの大人気の観光地で、個人的には中国の桂林の川下り「漓江下り」とともに子供のころから何度も耳にする機会があった観光地でした。

ライン川の中流上部、マインツ〜コブレンツ間の約65kmが世界文化遺産に登録されています。その昔ヨーロッパを結ぶ大動脈として栄え、13〜14世紀には諸侯が通行税を徴収するために、川の傍にたくさんの城塞を築きました。現在でも約30の古城が残っていて、周りのぶどう畑とともに美しい風景を形作っています。

特に見所が集まったリューデスハイム〜コブレンツ間のライン川クルーズが最も一般的な観光コースになっています。

私は今までにライン川クルーズを2回楽しみました。古城が好きな人にとってその時々で色々な表情を見せる絶景ですので何度でも楽しめるクルージングだと感じています。

上の写真は1245年に築かれたライエンフェルス城です。当時はカッツェネルンボーゲン伯ディーター5世の居城でかつライン川の徴税所として使われていたそうです。現在は一部がホテルになっているようです。

  

右上の写真はゾーネック城で、11世紀にアーヘン近郊のコルネリミュンスター修道院の護衛と遠隔地支配が目的で建設されましたが、13世紀ころには一時盗賊の巣窟となっていたそうです。現在は一部が博物館になっているとのことです。

上の写真のネコ城(ノイカッツェネルンボーゲン城)は、ザンクト・ゴアールにほど近い岩山に座る金髪の美女の寓話で有名な「ローレライの岩山」の上に立っています。対岸にあるラインフェルス城とその町の護衛の目的で築城されたそうです。

その後最近は高校の校舎として使われていましたが、現在は日本人の投資家の所有になっているそうです。ホテルとするためにドイツ政府から数億円で購入し十数億円かけて補修し、調度品を準備し、一般には公開されていませんが高級なプライベートの宿泊施設になっているようです。

上の写真はライン渓谷の中ほどにある高さ約130mの巨大な岩であるローレライです。この辺りは川幅が狭く流れが速く、さらに川底には岩もあったことから航行の難所として有名でした。

昔、ローレライでは美しい乙女の歌声が響いてきて、その美声に思わず舵を取るのを忘れ、多くの船が水没してしまったという「ローレライ伝説」が生まれたそうです。この伝説に詩人ハイネが詩を作り、作曲家ジルヒャーが曲をつけた「ローレライ」は日本でも有名になった歌です。

なおこの岩山の麓には下手なカタカナで「ローレライ」と書かれた手作りのような小さな看板が置いてありましたが、それを見つけた時は興ざめしてしまい、また日本人として恥ずかしい思いをしたことを覚えています。現在ではその看板は撤去されているようです。

   

右上の写真の山の頂上にはお城というよりももっと小規模な砦が築かれていたのでしょうか。

上の写真は川沿いのお城の中を見学した時にテラスからライン川を眺望した風景です。

   

左上は10世紀にザクセン家の皇帝によって築かれたといわれるシェーンブルク城で、レ・ミゼラブルの作者ビクトル・ユーゴが「最も美しい廃墟」と絶賛したことでも有名です。現在は、一部が博物館、残りがホテルとレストランになっているそうです。

また右上の写真はプファルツ城で、ルートヴィヒ4世によってカウプ付近のライン川中州に建てられた珍しいお城です。1327年から1866年までライン川の重要な税関所の一つとして機能していたそうです。

川下りクルーズでの醍醐味は、美味しい現地のグルメ料理や飲み物をとりながら皆で楽しく歓談し、見所が近づいてくればデッキに出て移り変わる景色を愛でたり、写真を撮ったりできるところだと思います。

この日も良い天気に恵まれてライン川クルーズを十分に満喫することができました。

この記事は「海外旅行回想録(15) ー ドイツ(後編)」に続きます。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする